第一幕その十三
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第一幕その十三
「罪深い血は逆流し酷く恐れ怯えてだ。罪深い欲求の世界の中へ」
「死に」
「それを」
「この逆流の血はせき止める門をもあらたに超えては流れ込もうとする」
そしてさらに話していく。
「この傷からあふれ出るものは他ならないあの槍で主が傷付けられた場所にある」
「あの主とですね」
「確かにそうです」
「それは」
「私はわかる。あの地で主が聖槍で傷を受けられた時に血の涙を流し苦悩の神聖な憧れのうちに人の汚れた罪を悲しまれたことを」
今それがわかると。話すことができた。
「この聖なる地で私は罪深い血を流し至尊の宝を管理し救世のバルザムの保護者である」
話が続く。
「私の罪深い血は憧れの泉の中から絶えず流れ出るのに如何なる贖罪もそれを鎮めてはくれぬ」
その話はまさに嘆きそのものであった。
「慈悲深い神よ、その慈悲を。我が継承の務めに免じてこの傷口を塞ぎ聖なる死を与え御身の為純潔な身として蘇らえらせ給え」
「共に悩みて悟りゆく」
「純粋無垢の愚か者」
騎士と小姓達はさらに話していく。
「かかる男を待てと」
「我の選べる男よ」
「ですから王よ」
「そうです」
彼等はその王を円形に取り囲んでいる。そのうえで告げてきていた。
「ですからお心を安んじられ」
「今日はお勤めを」
「わかった」
それには止むを得ないといった顔で頷く王だった。
そうしてだ。彼はさらに言うのであった。
「開くがいい」
「はい、それでは」
「そのまま」
その箱が開かれそのうえでそこから見事なまでに白銀に輝くその杯が姿を現わした。それはすぐに王の前に差し出されたのだった。
王はそれもまずは頭を下げ黙祷を捧げてから広間全体にその杯を見せようとする。その杯を手に持ってそれを周囲に見回させるのだった。
「我が肉を取れ」
「我が血を受けよ」
「我等の愛に」
「我を偲ばん為に」
こう話していく騎士と少年達であった。あの主の言葉だった。
聖杯から目も眩む様な紫紅色の光を放ち広間の中を柔らかく照らす。騎士達も小姓達もその光を受けて恍惚となる。先王もそれを浴びて言う。
「この聖なる喜び。主は今日何と素晴しく我等に応えてくれるのか」
「はい、確かに」
「今は」
他の者達もその光の中で話していく。
「この喜びは他の何にも」
「代えられません」
「どのようなものも」
「何があろうとも」
やがてそれが収められ広間は元の白い光に包まれたものになった。小姓達がその中でも言うのであった。
「最後の聖餐の葡萄酒とパンを」
「かつて主は共脳の愛の力を通じて」
「自ら流される血に変えられ」
「自ら捧げる血に変えられた」
その最後の晩餐のことであった。
「今日汝等を元気付ける為」
「幸
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