二十一 疾風に勁草を知る
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ハヤテさん!!」
毒のせいで痺れる身体を無理に起こして横島は声を張り上げた。ハヤテは今周囲に木がない場所――シカマルがいた所と変わらない場所にいる。
つまり潜んでいる音忍にとっては狙いが尤も定まりやすい絶好の地点にいるのだ。
助けに行こうと足に力を入れる。手裏剣の雨の中へ飛び込もうとした横島を破璃が引き止めた。行かせまいとする破璃に再び強く襟を引っ張られる。
咽ながらも助けなければと焦燥感が募り、横島は文珠を生成しようとした。けれど毒のせいでブルブル震える拳は霊能力を集束出来ない。サイキックソーサ―でさえ、霞となって消え去った。
「くそっ!」
どうして自分はいつも肝心なところで役に立たないのか。なぜ守ってもらってばかりなのか。
見守ると決意したばかりなのに。背中を押してやれるような奴になりたいと宣言したばかりなのに。
守りたい――――そう願ったばかりなのに。
咄嗟に腕で頭を覆うハヤテ。そしてその上から串刺しにせんとばかりに降るクナイと手裏剣の雨。それらが全て緩慢な一場面に見えた横島は、声の限りに叫んだ。
「チクショオォオォオ―――――――――――――――ッ!!!!」
刹那。クナイと手裏剣は何かに弾かれた。
木立の中、青白い光が閃く。
ハヤテだけを守るようにして張られた円状の膜。光を放つ【守】の字が横島の眼の端に確かに映った。
呆然とする横島と同様ハヤテも愕然と佇んでいるなか、その場を包み込むように淡く光る青白い光。
そしてふっと消える珠。
ソレを目にして横島ははっとする。
黒髪の子どもを助けるために使った文珠は二つ。一つは子どもの姿を隠す【隠】、そして【縛】の効果を成立させるため用いた【糸】と【専】。【専】の文珠は【隠】から炎の球を消すのに【水】に変えた。けれど【糸】の文珠はそのままその場に放置していたのだった。
そして今、彼らがいる場所はちょうど【縛】の文珠を発動させた場所。
文珠を生成できる横島は文珠の遠隔操作が出来る。遠くにある珠の字を変える事など造作も無い。
だから横島の気持ちに反応した文珠が【糸】から【守】に変わったのだ。
「ハヤテさんっ!!」
横島の呼び掛けにはっと我に返ったハヤテは、青白い光に動揺する気配を頭上の木から察した。
すぐさまハヤテはその気配のする木の上へ跳び上がる。キンッと刃物と刃物が搗ち合う音が空中にて響いた。
暫し続くその激しい音と誰かと誰かが衝突する気配を、木の幹を背に横島は目で追った。握り締めた拳にじわりとした汗を感じる。毒がいよいよ身体中を駆け巡り、はあはあと荒い息を繰り返した。
一際大きい刃音が木立の中で轟く。
そして一時の静寂。
緊張している横島の
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