二十一 疾風に勁草を知る
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とて何度も死ぬような境地に陥っている。けれどたった今まで横島を追い詰めていた者達があっさり息絶えるのを見ると、ゾクリとした怖気が彼の背筋を這った。
毒による寒気だと自身を誤魔化し、今更ながらとんでもない世界だと悪態をつく。同時に忍者一人にも歯が立たなかった自分の不甲斐無さに臍を噛んだ。
ぼんやりと忍び達の戦闘を眺めていた彼は、ふと気付くとハヤテに顔を覗き込まれていた。
「大丈夫ですか、ごほ…」
「そ、そっちこそ!もう終わったんスか?」
慌てて見れば、あちこちで音忍達が倒れている。彼らの刀傷から流れる鮮明な赤が横島の目に焼きついた。
頬についた返り血を拭いながら、ハヤテは横島の身体を支えようと手を伸ばす。その手を避けるように、横島は若干後ずさってしまった。
その行動だけで察したのであろう。横島と視線を合わせるように膝を折ったハヤテは苦笑を浮かべる。
「忍びは殺るか殺られるかの世界に生きています。甘さは必要ないんですよ、ごほ…」
その一言が耳に入った途端、横島は目の前の男が遠い存在に見えた。しかしながら心のどこかでその言葉を納得している自分がいた。
火影の記憶を受け継いでいる彼は至極自然に、ハヤテの言葉の意味を理解していた。
「わかってはいるんスけど…何も殺さなくても…」
それでも横島は視線を彷徨わせながらぽつりと否定の言葉を口にする。やはり甘さを捨て切れない彼は道化を被っていてもいなくても、[横島忠夫]なのだ。
場の空気が重くなる。血飛沫が散らばるその場所で横島の荒い咳が大きく響いた。
「どうしたんですか!?」
「その、ど…くを…」
「なぜもっと早く言わないんですか!?」
慌てて音忍達の死体を手探るハヤテ。何をしているかと問うと、毒を扱うならその解毒剤も必ず持っているはずとの答えが返ってくる。
なるほど、と木の幹に寄り掛かりながらおそるおそる死体を見ていた横島は、次の瞬間さあっと青褪めた。
(一、二、三………七、八。…八?…………八人!?)
ザシュッ!
何かが貫通する音がする。音がしたほうへ視線を向けると、死体を手探りしていたハヤテが死体の上に倒れ込んでいた。
「ハヤテさんっ!!??」
「く…まだ一人いたのか…」
死体に伸し掛かりながら肩に刺さったクナイを抜くハヤテの姿にほっと息をつく。安堵を感じると同時に横島は自責の念に駆られた。
(そうだ、シカ三角を襲っていたのは九人の忍者だったはずだ)
失念していた。横島が木の上から蹴り落とした九人目の忍者。彼がおそらく今ハヤテを襲撃した人物だろう。逃げるのに必死だったため相手の人数まで正確に数えていなかった。
肩を押さえているハヤテが横島の傍へ行こうと足を踏み出すが、途端手裏剣の嵐が上空から降り注ぐ。
「
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