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戦場のヴァルキュリア 第二次ガリア戦役黙秘録
第1部 甦る英雄の影
第2章 緑の迷宮
出会い
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ールで食べたあのフカフカで柔らかな食感が懐かしく、機会があればもう一度口にしてみたいと思っていたほどだ。学校生活の華がパンというのもおかしなものだが、他に娯楽が無ければ仕方がない。

「あの……あなたがアンリ・クロウ少尉ですか?」

 ついに来たかとアンリも覚悟を決める。声のした方に振り向くと、柱の影からダルクス織りのケープが見えた。代々伝わる独自の模様が特徴の織物を身につけるダルクス人は多く、かのイサラ煙幕弾を単独で開発した天才技師、イサラ・ギュンターもダルクス模様のケープを愛用していたという。

「そうだ。私がアンリ・クロウだが、どうかしたのか?」

「あなたの部隊の戦車を、見せてもらえませんか?」

 おずおずと出てきたのは、やはりダルクス人の少女だった。小柄な体躯にダルクスのケープを羽織り、青みがかった髪はボブカットで整っている。淡い青色の軍服は義勇軍所属の証だ。少し前髪が長く、目元まであと少しで届きそうである。
 少女の言葉は以外にも、戦車にスコープを当てたものだった。変わった頼みだが、見せるだけなら構わないだろうと判断し、ゆっくりと立ち上がる。

「構わないが、あの戦車がそんなに特殊なのか?」

「いえ、噂で、何ですが……帝国がガリア侵攻直前に超重量級戦車を開発していたそうで、それの見た目に似ていまして……」

「よくある話だが興味深くもあるな。詳しく聞かせてくれ……それと、君の名前を聞いてなかった」

 少女は嬉しそうに微笑む。車庫へ向かい歩き出したアンリはふと立ち止まり、少女に訊ねる。先程の恥ずかしさと緊張でぎこちない顔だった少女は、満面の笑顔で明るく答えた。





「はい。義勇軍第四中隊第二小隊所属のイサラ・ギュンター伍長です!」
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