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復興の花
復興の花
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ソファーに腰掛けた三人
 下原はにこやかな表情
 正の表情は硬い
下原「この度は大変でしたな」
正「お蔭様でなんとか船が出せるようになりました」 

 隣室の組合事務室から怒鳴り声が聞こえてくる
漁師A「やっとやれや。遅いんだよ。おめえらは」
下原 「にぎやか過ぎてごめんなさい。うちでは一番偉いのが漁師達。そのしたに組合長、事務員がいます。変わってるでしょ?」
水野「うちもあまりかわりませんから」
正「やっとと言う言葉は静岡でも催促するっていう意味で使われているんですね」
下原「漁師の共通言語ですよ」
水野「ほんと事務方には嫌な言葉ですよ」
 下原が大声を出して笑った。
 
 祭で賑わう由比漁港の様子

 赤字経営の漁協が多く漁協合併が進む中、由比漁港は黒字経営を維持する。その理由は日本の漁業の問題点である一貫した漁場の管理、農協と連携した直売所の経営などである。枠にとらわれないスタイルは漁師主義の漁協経営による産物と言っても過言ではない。


 
 
 夕日が沈む漁港
 
 一台の黒いワンボックスカー
 発泡スチロールを後ろのドアに積む勝と充
 その横で下原に挨拶をする正と水野
水野「あれこれ聞いたのにお土産まで頂いちゃってほんとにどうも有難う御座いました」
 水野と正は頭を下げる
下原「頑張ってください。信念は曲げないで持っているといつかはどんなに厚い壁でも貫きますから」

高速道路を走る車
夜道
ワンボックスカーの車内
充「漁師主導でほんとに上手くいくんですか?」
水野「うまくいくよ。絶対」
勝「正はどう思うんだ」
正「時代は変わったんだよ。魚を獲って、はい終わりじゃなくてこれからは俺達も無い頭使ってやらなきゃな」
水野「これからは落ち込んでる暇を与えないぐらいに働いてもらいますよ」






 
 
 越喜来港
 
 まだ瓦礫がところどころ残る
 船から水揚げされたものを荷おろしする正たち

認可法人に認められないまま、
震災から半年が過ぎ
太平洋からの冷たい風が吹き始めていた。
 
 事務所
 デスクで事務仕事する水野
 玄関から声が聞こえてくる
客人「すみません」
 玄関
 水野が戸を開ける
水野「はい。何の御用ですか?」
 玄関外
客人「申し遅れました。私こういうものです」
 客人の突き出した二枚の名刺には
『水産庁加工流通課補佐 遠野 稔』
『REFISH 代表 遠野 稔』
 
 事務所奥のパーテンションで仕切られた応接間
 テーブルを挟み対面に置かれたイス
 水野と遠野
遠野「今日は水野さんたちが自分たちで一から会社作りしているというのを聞きつけてやってきました」
水野「悪あがきはやめて県漁に頭
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