第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十二 〜偽物〜
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実だ。あのような事で、偽りは申さぬ」
すると、老爺は、土下座を始めた。
「何の真似か。私は、土下座される謂れはない、止せ」
「いいえ。太守様、是非とも、本物の石田散薬、この爺にお分け下さいませ」
「…………」
「実は、酷い神経痛に悩まされていましてな。医師にも見放され、藁にもすがる思いでこの薬を、と。何卒、この通りですじゃ」
すると、
「俺もどうかお願いします! 母が、捻挫が治らず難渋していまして」
「私も、この子の骨折に効く薬が必要なんです」
……列に並んでいた皆が、口々に訴えてきた。
その全員が、真剣そのものだ。
「元皓、愛里。張世平という商人を、至急探し出してくれ。大陸の何処かにいる筈だ」
「ええっ? 太守様、大陸全部と言われましても……」
「……あの。とっても広い上に、名前と職業だけでは難しいかと」
元皓と愛里が、盛大に溜息をつく。
「月、白蓮、華琳、睡蓮、それに何進殿にも頼めば良い。書状は認める。この者らが、我が生家の秘伝薬を頼りにするならば、それは無に出来ぬ」
「ですが、それでも今日明日に、とは行きませんよ? どうするのですか?」
「……やむを得まい。私が処方する」
張世平が、ギョウに姿を見せたのは、それより二月後の事である。
その間、私は政務の傍ら、ひたすら石田散薬の処方に追われる羽目になった。
……その分、魏郡のみならず、冀州全土から多大な感謝を受ける事にもなったが。
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