第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十二 〜偽物〜
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、元皓が出てくるのさ」
真っ赤になって慌てる二人。
「ふふ、冀州の二賢も、ご主人様にあっては形無しだな」
愛紗の言葉にもあったが、今やこの二人、冀州では知らぬ者がない程の有名人でもある。
その息の合いようは、他の追随を許さぬ程だ。
……相思相愛なのだから、当然とも言えるが、な。
「星も良いな? お前も機転が利く、何か起これば、その時は己の判断で動け」
「はっ!」
「ったく、旦那も人が悪いぜ。すっかり退路を断っちまうんだもんなぁ」
「そう申すな。私とて、お前が適任と思えばこそだ」
「ハァ。わかったよ、その役目、引き受けた」
私は、大きく頷く。
「では、ご苦労だが明日、出立で良いな?」
「へいへい」
「御意!」
夕刻。
私は愛里(徐庶)と元皓を伴い、城下に出た。
「人の往来が、随分増えましたね」
「商店の数も、僕が官吏になった時と比べて、倍近くになりましたしね」
内政に携わってきた二人に取って、感慨深いものがあるのだろう。
「ところで、歳三さん。わたし達に見せたい物って、何ですか?」
「そうそう。僕も、最前から気になっているんですけど」
「うむ。もう見えてくる頃だが……む?」
目指す場所に着くと、そこは人だかりが出来ていた。
「うわぁ。何でしょうか、これは?」
「行列が凄い事になっていますよ」
二人は、目が点になっている。
この先にある店から、列が続いているようだ。
人波をかき分け、進んでいくと、列の先頭が見えた。
「あれが、今日の目的の店だ」
「ふえっ?」
「太守様。まさか、これに並ぶと仰るんじゃないでしょうね?」
「そのつもりはない。……だが、これ程までとは想定外であったな」
店に入ると、
「お客様。誠に恐れ入りますが、列にお並びいただきたいのですが」
若い奉公人が、私に話しかけてきた。
「主人は在宅か?」
「お約束で?」
「いや。だが、在宅しているのであろう?」
奉公人は、ジロジロと私を上から下まで見る。
「恐れ入りますが、主は只今商いで外出しておりまして」
私も含め、皆華美な服装は好まぬ上、公用でもないので地味な装いである。
どうやら、それを見て侮られたようだ。
「……そうか。私の顔を知らぬ、と申すのだな?」
「存じ上げませんな」
「な、何て失礼な! この方は」
愛里が、ムッとした顔で文句を言おうとする。
「止せ、愛里。躾のなっておらぬ輩に、言葉は通じまい」
途端に、奉公人の表情が変わった。
「おい。どうかしたのか?」
「いや、この方々が旦那様に会わせろと。大方、強請たかりの類でしょう」
「なら、叩き出すまでだ。先生方、出番ですよ」
その声を合図に、奥から数人の大男がのそり、と姿を見せた。
「何か用か?
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