第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十一 〜至誠一貫〜
[1/6]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
翌朝。
執務室に入ってすぐに、兵がやって来た。
「土方様。徐庶と名乗る少女が、面会を求めて来ています」
「そうか。ここに通してくれ」
「は? この部屋に、ですか?」
「そうだ。何か問題があるか?」
「い、いえ。では、お連れします」
慌てて出ていく兵と入れ違いに、風が入ってきた。
「お兄さん、何かありましたか?」
「うむ。仕官希望の者が来たので、通すように申し渡した」
「お兄さんが直に、という事は、見所のある人材なのでしょうねー」
「それは、風も共に確かめると良い」
人を見る眼は、私よりも確かな風だ。
それに、仕官となれば、共に働く仲間となる。
先に顔合わせしておくのは、何ら不都合はなかろう。
「それでお兄さん。今度は、どんな女の子なのですか?」
「……風。私はまだ、何も言ってはおらぬぞ?」
「いえいえ。お兄さんはモテモテですからねー。油断ならないのです」
「私は、そんな下心で仲間を募ったりはせぬ」
「勿論、お兄さんがそんな事をするとは思いませんけどね。でもでも、風みたいに、女の子から好きになってしまう場合はどうしようもないのですよ」
「……ならば、先に申しておく。仕官を望んできた者は、確かに少女だ」
「むー。やっぱり、風の言った通りではありませんか」
「だが、才は確かだ。人物は、風が得意とする鑑定をしてみせよ」
「わかりました。ただし、風は容赦しませんけどねー」
そして、徐庶が姿を見せた。
「拝謁を賜り、恐悦至極にございます。姓は徐、名は庶、字は元直と申します」
礼に適った、見事な挨拶だった。
「魏郡太守、土方歳三だ」
「風は軍師を務める程立ですよー」
そして、予告通り、風の質問責めが始まる。
問答は、一刻ほども続いた。
「どうだ、風?」
「お兄さんが見込んだだけの事はありますねー。風も驚きました」
兵の動かし方から、外交、内政、多岐に渡る問いかけにも、徐庶は的確に答えを返した。
常識の中から、最適の答えを導こうとするその姿勢は、派手さはないが堅実な性格を物語っている。
「徐庶、私からも良いか?」
「はい、どうぞ」
「お前は、この魏郡で何を為そうとするか?」
徐庶は頷くと、
「ご承知の通り、私は水鏡女学院で学びました。勿論、兵法だけではありません。農業、商業、外交……いろんな書物に触れ、身に付けてきたつもりです」
それは、風との問答に集約されていた通りだろう。
「でも、一人で全てに通じる……それは到底無理だと悟りました」
「ふむ。それで?」
「わたしは、仁愛を第一に考えています。それも、いろんな形があるでしょうけど。叶うなら、庶人の為に、学んだ事を活かせたら、と」
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ