第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十一 〜至誠一貫〜
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ませんでしたが、お兄さんにお仕えする前の日、夢で見たのですよ。風が、日輪を支えているというものでしたが」
確か、史実の程cはそれで改名をしたのであったな。
この世界では風もまた、そうするつもりなのであろうか?
「本当は、お仕えする相手を見つけた後で、風は名を変える予定だったのですけどねー。でも、それはもういいのです」
「何故だ?」
「お兄さんは、風達に共に歩む、と仰いましたよね? それなのに、支える、というのはおかしいかと思いまして」
「わかった。では、その線で決めるが良い。他の者は?」
星は蝶をあしらった意匠を希望したが、愛紗らは特に希望はないようだ。
「それよりも、歳三さんご自身のを、お聞かせ下さい」
「そうですね。何と言っても、歳三様の牙門旗は、そのまま私達の旗印でもありますから」
「僕も見たいですね。太守様の意匠を」
皆、同意とばかりに頷く。
「良かろう」
流石に竹に、という訳にはいかぬので、紙に認めた物を取りだし、卓上に広げた。
墨一色なので、色合いは指定するしかないが、大凡の想像がつけば良い。
「赤字に金色で『誠』の字を染め抜く。……染めるのが難しければ、刺繍でも良かろう」
「お兄ちゃん、この模様は何なのだ?」
「うむ。これは『だんだら』と言う。いくつも段を作る意匠だ」
「しかし、派手ですねー」
「そうですね。これは、どこからでも目につきます」
「牙門旗自体、己の存在を誇示する役割があるのであろう? ならば、地味な意匠にするよりは派手な方が良かろう」
「ですが、主。この『誠』は、何でござる? 主の名に、一文字たりとも含まれておりませぬぞ」
星の指摘は、尤もだ。
「……この字は、『至誠一貫』を意味する」
「至誠一貫……ですか?」
彩と星は、首を傾げる。
「孟子の言葉ですね」
流石は稟、即座に言い当てた。
「至誠にして動かざる者いまだこれあらざるなり、でしたねー」
風が続けた。
「で、一体どんな意味なのだ?」
「鈴々! お前はもっと勉強しろ!」
「まぁまぁ、愛紗さん。落ち着いて下さい」
愛紗の剣幕に、愛里が慌てて取りなす。
……つくづく、賑やかな事だ。
「真心をもって一生を生きていく、って意味さ。そうだろ、旦那?」
「嵐の申す通りだ。これは、我が生き様……そう捉えて貰いたい」
これ以外の意味もあるのだが、それを皆に言うつもりはない。
「簡単なようで、難しい決心です。でも、太守様が仰るなら、説得力があります」
「確かに、殿らしいな」
「ああ。それでこそ、主です」
「では歳三殿。これで決めさせていただきます」
ふっ、またあの旗の下で戦う事になるとは思わなかった。
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