第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十一 〜至誠一貫〜
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彩の槍が、鈴々の喉元を捉えていた。
「まだまだ、修行が足りんな。それでは、私には勝てんぞ?」
「よし、ならまた今度、勝負なのだ」
「おや、殿に愛紗。見ておいででしたか」
「あ、お兄ちゃんなのだ!」
二人が、私に気付き、近寄ってきた。
「彩。腕前は初めて見るが、なかなか見事なものだ」
「ははは、私は根っからの武人。鈴々には悪いが、後れを取るつもりはありませぬぞ」
「うー、悔しいのだ。愛紗、相手になって欲しいのだ!」
「ふふ、良かろう」
愛紗は得物を手に、立ち上がった。
「ところで殿。折り入ってお話が」
汗を拭っていた彩が、私を見た。
「何か?」
「疾風(徐晃)とも話していたのですが、牙門旗は如何なさるおつもりか?」
「牙門旗?」
「然様。郡太守は確かに兵権はない。だが、自衛の戦力を持つ事は禁止されておらぬ故、我らも当然、官軍となります」
「うむ」
「となれば、正規軍として牙門旗があって然るべきかと。意匠も含め、殿のご意向を伺いたい」
旗印か。
確かに、共和国でも旗は作っていた。
敵味方に存在を誇示する役目もあり、その旗を倒したり奪う事は、合戦の勝利を意味する。
彩に指摘されるまで失念していたが、用意せねばならぬな。
「そうだな。急ぎ、作らせるとしよう」
「意匠はどうなさる? 一般的には、姓を記すのが習わしだが、殿は姓が変わっておいでだ」
「……いや、私に考えがある。夜、皆を集めてくれぬか?」
「承知した。では、夜に」
月は『董』、華琳は『曹』、睡蓮は『孫』。
皆、姓が一文字だからこそ、牙門旗としての見栄えがする。
……『土方』では、目立つだけで違和感が拭えぬ。
だが、家紋、という訳にも行かぬであろう。
そもそも、家紋の習慣のない地では、あまり意味がない。
「あ、歳三様。探しましたよ」
「稟か。如何致した?」
「郡の巡検が終わりましたので、そのご報告にと」
「わかった」
ともあれ、政務を片付けるか。
そして、夜。
「皆、相済まぬ。各々が多忙であろうが」
「いえ、牙門旗の事、ずっと気がかりでしたから。彩と、今日にも申し上げようかと話していたところです」
と、疾風。
「主。既に案をお持ちと、彩より聞きましたが?」
「その通りだ、星。その前に、皆の分も作らねばならぬが、意匠の案があるか?」
「私は不要だ。韓馥殿の許で作った物がある」
「おいらもだね。昼行灯の形見でもあるし、このままでいいよ」
彩と嵐は、本人がそれで良いのなら無理強いする事もあるまい。
「風は、日輪が登る意匠がいいですねー」
「ほう? 拘りがあるのか?」
「はいー。まだ、お兄さんには話して
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