第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十一 〜至誠一貫〜
[3/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
それを見て、若手の官吏が奮起した結果が、目の前の山という訳だ。
「それにしても……。あの変態共、貯め込んでいたよね」
「うん。それだけ、多くの庶人が泣かされてきたって事だけどね……」
嵐と元皓の二人も、多少は余裕が出てきたのだろう。
……私の方は、一向にその気配がないが。
「愛里」
「何ですか、歳三さん?」
「これでは落款が追いつかぬ。至急の案件とそれ以外を、分けてはくれぬか?」
「あ、申し訳ありません」
愛里は、山の片方を指し示す。
「申し上げ忘れていました。此方が、至急の分です」
よく見ると、積み方に一定の決まりがあるようで、山はいくつかに分けられている。
「……では、これは?」
「はい。明日までに、落款をいただきたい分です」
「…………」
「それで、順に三日以内、一週間以内です。……あの、どうかなさいましたか?」
首を傾げる愛里。
「……いや、何でもない」
今更、職務を放棄するつもりも厭うつもりもない。
……が、これはまた、凄まじい量だ。
まぁ、ゆるりと片付けるとしよう。
一度に気張っても、先は長いのだからな。
「うりゃりゃりゃーっ!」
「踏み込みが甘いぞ、鈴々!」
「五月蠅いのだ!」
昼食を済ませた私は、槍を交える音に中庭へと出てみた。
ほう、彩(張コウ)と鈴々が鍛錬の最中か。
「おや、ご主人様もおいででしたか」
そこに、愛紗も姿を見せる。
「隣、宜しいですか?」
「ああ」
「失礼します」
並んで腰掛け、鍛錬を見守る。
「ご主人様。この二人の勝負、どう思われますか?」
「うむ」
鈴々の手並みは、無論承知している。
小さな身体からは想像もつかぬ程、重い一撃を繰り出す。
そして、何よりも俊敏な動きを見せる。
……ただ、攻撃が性格故か、やや直線的なきらいがあるようにも思える。
彩は、確とその腕を見た事はまだない。
少なくとも、今は鈴々相手に、余裕があるようだが。
「実力はまだわからぬが、恐らく彩の勝ち、と見た」
「根拠は何ですか?」
「経験の差だな。鈴々と彩を比べると、潜り抜けた修羅場の数が違うであろう」
「……はい。それに、鈴々はまだまだ子供、素直なのは良いのですが」
愛紗も、鈴々の欠点には気がついているのだろう。
「まるで、本当の姉妹のようだな。愛紗と鈴々は」
「ええ。楼桑村での誓いもありますが……何故か、放ってはおけないのです」
実際、関羽と張飛は何の血縁もないにも関わらず、最後までその仲は良かったと聞く。
それが、この世界でも作用しているのやも知れぬな。
「勝負あったな」
「うにゃー、また負けたのだ……」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ