第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十一 〜至誠一貫〜
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「すると、軍師ではなく、文官が所望、と申すのだな?」
「はい」
軍師としても、恐らくは一流のものがあるに違いない。
……だが、私には既に、稟、風がいる。
やや立ち位置は異なるが、元皓(田豊)や嵐(沮授)もいる。
多くて困る存在ではないのであろうが、より文官に特化した人材が必要なのも事実。
そう考えると、徐庶はまさに打ってつけの存在とも言える。
そう思い、風を見た。
「どうか?」
「風は問題ありませんねー。大掃除はまだまだ終わってませんし、人手は必要ですから」
能力については、今更という訳だな。
「ならば、決まりだな。徐庶、これからの働き、期待させて貰おう」
私の言葉に、徐庶が喜色満面となった。
「ありがとうございます! 以後、私の事は愛里、とお呼び下さい」
「真名を預けると言うのか?」
「はい!」
「そうか。私は真名がない、好きに呼ぶが良い」
「それなら、風も真名でいいですよ? 宜しくですよ、愛里ちゃん」
「はい、こちらこそ。歳三さんに風さん」
こうして、新たな人材を得る事になった。
他の皆とも真名を交換し合い、ささやかな歓迎の酒宴を開いた。
それから、一週間が過ぎた。
一部の官吏は、逃げ出すように魏郡を後にしたが、調べてみると不正に蓄財していたり、何らかの後ろめたい事を抱えている者ばかり。
尤も、積極的に不正に手を染めていた者ばかりではなく、上司や周囲に強いられた者も少なからずいた。
そうした者は、不正に得た分を返納の上、再度同じ過ちは犯さぬという誓紙を入れさせ、元の地位に戻した。
全てを罰するのは困難を伴い、第一行政そのものが麻痺してしまう。
それならば、性根を入れ替えると誓う者は、今一度機会を与えても良かろう。
それに、官吏と言えども、全てを没個性化させてしまうのは好ましくない。
多少癖があろうとも、能力のある人物ならば活かすべき。
……皆と話し合い、得た結論だ。
若干の混乱は残ってはいたが、概ね、ギョウ県については落ち着きが戻ったようだ。
「歳三さん、次はこれを」
ドサリと、竹簡が積まれた。
「愛里。先程よりも、増えたようだが?」
「ええ。とにかく、少し前まで怠慢な行政でしたからね。新規事業が加われば、こうなりますよ」
「……うむ」
愛里は、予想以上に優秀であった。
元皓らと手分けしながら、予算の無駄排除と効率化を進めている最中である。
人気取りや点数稼ぎだけの仕分けではなく、的確に問題点を指摘しするので、相手の官吏も黙らざるを得ない。
尤も、指摘だけでなく、どうすればより改善が見込めるか、その点を忘れずに添えるので、結果として改善する場合が圧倒的に多いのだが。
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