第十八話 最近よく夢を見るんだ
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人間その物を否定するに等しい事だろう……。
最近よく夢を見る。一昨日見た夢は母さんの夢だった。夢の中で母さんは
“可哀想なエーリッヒ、皆に虐められて”
と言って泣いていた。俺も泣いた。
“そうなんだ、皆で俺を虐めるんだ”
そんな俺を母さんが優しく抱きしめてくれた。妙なんだけど俺は五歳くらいの子供になってた。朝起きたら枕が濡れてたな。あの夢はどういう意味なんだろう。
昨日見た夢はとんでもない夢だった。俺は狭い一本道を歩いていた。反対側から鍔の広い帽子を深く被った老人が杖を突きながら歩いて来る。そして俺が進もうとするのを邪魔するんだ。どういうつもりだとムッとすると
“返れ、元の世界に返れ”
と老人が言う。驚いて
“お前、誰だ”
って訊くと老人が顔を見せたんだが片目が無かった。
“オーディン! 大神オーディン!”
驚いて俺が叫ぶとオーディンはニヤッと笑った。はっきり言って嫌な笑い方だった。かっとなってそこからはオーディンと怒鳴り合いになった。最近ジジイには腹が立っているんだ。
“お前は邪悪なる存在、この世界に居てはならない”
“ふざけんじゃない、俺を利用してる奴の方が邪悪だろう、帰らないぞ! そこをどけ、俺は向こうに行かなくちゃならないんだ!”
“ほう、向こうへ行きたいだと? 馬鹿者が! ならば苦しめ!”
そう言うと哄笑しながらオーディンは俺を杖で引っ叩いた。凄い衝撃が有って俺は叩きのめされた。そこで目が覚めた。なんと俺はベッドから転げ落ちていたよ。なんか凄い意味深な夢だった。最後の苦しめって言葉が妙にリアルだったな。
疲れてるのかな。カウンセリングとか受けた方が良いのかも。でもなあ、宇宙艦隊総参謀長が母さんの夢見て泣いてたとかオーディンに引っ叩かれた夢見てベッドから転げ落ちたとかって相談された方は如何思うだろう。“大丈夫か、帝国軍。総参謀長はマザコンでオーディンに呪われているぞ”、そんな噂が広まったら将兵は皆逃げてしまうだろう。 軍人ってのは妙な所で迷信深いからな、この手のオカルト話は厳禁だ。
「どうされました、こんなところで」
突然声がした、クレメンツだった。大将の階級を示す軍服を身に付け桜の木に手をかけて俺を見降ろしている。見降ろされるのは好きじゃないがまあ俺が座っているのだし相手がこの人じゃな、見降ろされても文句は言えん。多分心配して見に来たのだろうし……
「桜を見ていました」
「それは分かっています。昨日も見ていましたな、一昨日もです。皆不安がっております」
「……」
何でだ、俺が桜を見ると何で不安がるんだ。俺だって元は日本人だ。桜を見て物の哀れを感じたっておかしくないぞ。
「冷徹非情な宇宙艦隊総参謀長、当代きっての知将と謳われている閣下がぼんやりと桜を見ている。しかも三
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ