第7話 遠山家の奥義
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も出来ず、黙っていることしか出来なかった。
かなめと気まずい空気になってから、数分が経った頃、部屋の外から足音が聞こえた。
すると俺の後ろから、
「なんじゃい、キンジ。テレビもつけずに黙って座りおって」
「あ……いや、実家が懐かしくてね。コタツを楽しんでいたんだよ」
爺ちゃんそんな事を言いながら部屋に入ってきたので、適当に話を誤魔化す。
まさか、妹と気まずくなってました、なんて言えんしな。
「ほー……まあよい。ところでキンジ。お前も来年18になる。もう覚えてもいい歳じゃ……『春水車』をな」
「え、シュンスイシャ? 何それ」
俺が聞くと……爺ちゃんは婆ちゃんが料理してる音を確認してから、
「遠山の秘技の一つ。技じゃよ、技」
声を潜めつつ、押し入れにあった金庫を出してきた。
正直、もう俺は格闘技なんかと無縁の生活をするべきなんだが……
(婆ちゃんにも秘密の――金庫にしまえる。技?)
どうなものだろう。興味は、湧くな。
カリカリカリ、カチッと金庫を開けた爺ちゃんが、
「これぞワシの爺ちゃんが版画で開発した、春水車。それを進化させたものじゃ。作り上げるのに時間がかかるんで、ワシも戦前からずっとコレクションしてきておるッ」
大量に取り出してきたのは……
……グ、グラビア雑誌や水着写真集の、切り抜きページっ……!
(な、なんてこった……!)
そういえばすっかり忘れてたけど、爺ちゃんは筋金入りのグラビアオタク。
いい歳こいてんのに、まだ現役だったのかよッ……!
「色本は、間を置いてからだとまた新鮮になる。飽きたと思っても、捨ててはならんぞ」
幾星霜の時をかけて選り抜かれてきた、名グラビアの数々が――
夢幻の光景のように、畳の上に広げられていく。
「ちょっ……しまってくれよ!」
興味が無かったから知らなかったが、こういうのは――
な、並べて見る鑑賞法だと、よりどりみどり感が広がってより危険だ!
しかも爺ちゃんからは丁度、横になってるから見えないかもしれないが、ここにはかなめが――
「……お兄ちゃん」
……間に合わなかったか。
声がした方を見ると、甘ヒスが収まったらしいが、代わりに冷たい目をしているかなめの姿があった。
「うぉ! かなめ、おったのか!?」
「かなめ……さっきの俺と爺ちゃんの会話を聞いてたんだったら、どっちが悪いのか分かるだろ?」
「うん。分かってるよ。――ちょっとお婆ちゃんの所に行って――」
婆ちゃんに、この春水車の事を伝えるためか、かなめがコタツから立とうとすると、
「ま、待つのじゃ、かなめ。遠山は自在に『返体』してこそ一人前なのじゃっ! これはその為の技
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