第三十八話 少年期【21】
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杖を旗のように勢いよく前に振り抜いた。それにより、杖の先端にできていた魔力弾が全力で的に向かってブン投げられた。
―――カ、カンッ!
一瞬後、2つの音が同時に響き渡った。お互いに目標の的を撃ち抜いたことがわかった瞬間、デバイスを待機状態に移行させてすぐに足を踏み出した。砂利を踏みしめる音が耳に入りながら、ラストスパートをかける。走る俺の隣には、深く青い髪が風に煽られた少女が一緒に並行していた。
残り数メートルは純粋な体力と走力によって決まる。遠くから聞こえる歓声も全く聞こえなくなり、感じるのは隣にいる競争相手と自身の鼓動だけだった。走る速さだけだったら、彼女と俺は互角。だが、如何せん体力に関しては彼女の方がずっと高い。先ほどまでの魔力の大幅な消費に、俺の身体が重くなっていた。
そして最後の一瞬、ゴールにたどり着いた俺はわずかな差でゴールテープを切ることができなかった。
******
「あぁーあ、結局クラ校勢は勝てなかったか…」
「2人ともすごかったわよ、本当に。私もあんなに冷や冷やしたのは久しぶりだったもの」
「少女Dは体力ありすぎるだろ。……次に今回みたいなガチンコ勝負になったら絶対勝ってやる」
「ぷっ。アルからそんなセリフが聞けるなんて」
うっさい、そっちだって相当の負けず嫌いの癖に。彼女はくすくすと面白そうに笑っているが、別に俺のことをおとしている訳ではない。だから怒るつもりはないが、多少むっと少女Dをねめつけるのは仕方がないよな。大人げないとは思うが、悔しいものは悔しい。いいところまでいったから特に。
「そうだわ。せっかくならガチンコ勝負に勝った勝者が敗者にお願いを1つ言えるっていうのはどう? これならもっと面白くならないかな」
「……まぁ、俺はそれでもいいけど」
「了解ね。それじゃあ、さっそく今日の勝者からのお願いだけど」
「え! 今回のも含まれるのか!?」
意外にちゃっかりしていた少女D。俺の驚きの言葉に当然とうなずき、にっこりと笑って見せた。
「いい加減、私のことをちゃんと名前で呼びなさい」
「えー」
「えー、じゃないわよ。公園の時はまだよかったけど、学校に来てまで少女Dはないでしょ。普通に恥ずかしいから変えなさい」
最後の言葉らへんは目が笑っていなかった。普段なら少年Bのように有耶無耶に誤魔化せられるが、さすがに約束した手前仕方がないか。あだ名呼びは俺の中で趣味となっていたからちょっと残念。俺は頭を掻きながら、しぶしぶ彼女のお願いにうなずいた。
「そういえば、お昼ご飯はどこで食べる? よかったらみんなで食わないか?」
「いいわね。せっかくだから私の友達も呼んでくるけど大丈夫そう?」
「あぁ、さっきの
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