第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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りを上げろ!」
しーん。
青白い顔に黒い長髪の男性だった。黒いズボンに赤っぽいシャツを着ており、通った鼻筋やら細い手足やら妙に美丈夫である。背もかなりの高さだ。あまりのハイテンションにユヅルもはじめも反応が遅れた。彼が九班の担当上忍と知り、マナは眉根に皺を寄せる。この匂い――
「ミントの匂いだなあああ! ハッカ味の飴を持っているだろ、よこせ!」
ばん! と机を叩いて立ち上がるマナに全員が驚いた顔をする。
「如何にも私がシソ・ハッカだがどうした! お前は九班の生徒だな!? さあ受け取れ――っ!」
シソ・ハッカとやらはすっと飴玉をどこからか取り出し、そして全力で投げた。この飴玉なら人の脳天をぶち抜くことが出来るんじゃねえかというスピードである。紅丸が怯えて赤丸のところに避難したのに対し、マナはそれを口でキャッチした。ペッ、と包みを吐き出しごりごりと音を立てて飴玉を砕くその姿にハッカは感極まった様子で、
「こ、こんな素晴らしい力を持った生徒に恵まれるとは!」
と言い放つ。別にすばらしい力でもなんでもないと思うけど、といのが呟き、シカマルはその傍でこんなのが担当上忍じゃなくてよかった、と溜息をついた。
「さあ、九班は私についてきたまえ!」
+
「先ずは自己紹介だ。私の名前はシソ・ハッカ。好きなものはミントの匂い、好きな言葉は“勤勉”で、嫌いなものは怠慢や百合の花粉。あれはどうも鼻がむずむずしてな……。趣味はハーブを育てること。特技はそうだな、潜水だろう。あまりしないが。幻術と水遁が得意なのだよ」
自慢と自信たっぷりに告げるハッカだが、三人とも無反応だった。正確に言えばマナは飴により口をふさがれており、はじめは始終無表情で、ユヅルはどう接していいのかわからず戸惑っているようだ。いきなりハイテンションで教室に踊りこんできた男にどう接したらいいのかわからなくなるのは当たり前とかもしれない。
「でははじめ君、君から初めてくれたまえ」
「……承知した」
無感動な声で言いつつ首をこっくんとかすかに上下させる。
「姓は一文字、名ははじめ。好んでいるものは特に無い。厭っているものは特に無い。好きな言葉は特に無い。趣味も特に無い。特技はあるが、好んでいるわけではない。夢も特に無い」
「お前の好きな言葉、“特に無い”でいいんじゃないのか? いや、これじゃあ口癖か」
「そうか……? 承知した。では、好きな言葉は“特に無い”だ」
「冗談なんすけど……真に受けんなよ特に無いはじめくん……」
天然なのか単純なのか。飴玉を食べ終わったマナが溜息をついた。
膝丈まである黒いズボンと、濃紺のパーカーをだぼっと羽織り、額当てを腰に巻いた姿の少年は、灰色の目をぱちくりとさせた。
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