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銀河英雄伝説〜悪夢編
第十七話 お前、今何を言ったか分かっているのか?
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とは無い」
「国務尚書にそう言って貰えると有難い、それで夜遅くにわしを呼んだのは何故かな? 明日ではいかんのか」

言外に詰まらぬ事で呼び出したのなら許さぬという響きが有る。相変わらず傲慢な事だ。だが何時までその傲慢を維持出来るか……。
「先程遠征軍から連絡が有った。遠征軍はティアマト星域にて反乱軍と戦い勝利を収めた様だ」
「それは目出度い、陛下の御威光の賜物であろう」

国務尚書の言葉に目出度いとは言ったが表情には不満の色が有る。それだけで夜遅くに呼んだのかという思いが有るようだ。
「確かに目出度い、しかし問題も有る」
「……」

「クライスト、ヴァルテンベルクの両名が命令違反を犯した。そのため遠征軍は一時危うい状況になった。今両名は司令官職を解かれ拘束されている。オーディンに戻り次第軍法会議が開かれるであろう」
「……」
ブラウンシュバイク公の表情が微かに強張っている、良い傾向だ。

「あの両名を遠征軍に参加させるようにと陛下に進言されたのはブラウンシュバイク公であったな」
「それは……」
国務尚書の指摘にブラウンシュバイク公が絶句した。

「あの二人の行動に責任は持てぬかな? 推薦者としてそれは些か無責任であろう。それに他にも問題が有る」
「他にも?」
驚いたような表情で国務尚書から我ら三長官に視線を移した。そしてまた国務尚書に視線を戻した。傲慢は消え去り不安そうな表情をしている。
「どういう事かな、国務尚書」

「同行した貴族達が居た。フレーゲル男爵、ラートブルフ男爵、カルナップ男爵、コルヴィッツ子爵、ヒルデスハイム伯、シャイド男爵、コルプト子爵、シュタインフルト子爵。このうちフレーゲル男爵、シャイド男爵は公の御身内であったと思うが」
「……いかにも、両名とも我が甥であるが」
「その他の貴族達も公の親しい貴族ばかりだ」
「……」

リヒテンラーデ侯が頬に冷たい笑みを浮かべた。
「どうやらクライスト、ヴァルテンベルクの命令違反には同行した貴族達が関係しているらしい。強要したか、或いは何らかの取引をしたか」
「まさか……」
ブラウンシュバイク公の声が震えた。

「彼らは今拘束されている。それでも信じぬかな」
「拘束……」
ブラウンシュバイク公は驚いている。まあ連絡を受けたこちらも最初は驚いたが。あの若者、相手が貴族であろうが容赦せぬところが有る。あるいは余程に憤懣が溜まっているのか。

「彼らが拘束されるとき容易ならぬ事を言ったようだ」
「容易ならぬ事?」
「いかにも。ブラウンシュバイク公、彼らは公の名前を出した」
「馬鹿な、何を考えている」
蒼白になっている。無関係か、おそらくはあの二人を自分の手ゴマにするだけで良しと思っていたようだな。しかし馬鹿な貴族達が先走った……
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