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銀河英雄伝説〜悪夢編
第十七話 お前、今何を言ったか分かっているのか?
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。まさか口に出すとは……。お前、今何を言ったか分かっているのか? 分かっていないだろう?

いや分かっているよな、つまり自分は何をしても良い存在だと思っているわけか。信じられんがそうなんだろうな。なるほど、ブラウンシュバイク公がヴェスターラントへの核攻撃を行うわけだ。俺が呆然としているのをどう思ったか、フレーゲル男爵は勝ち誇った顔をしている。

「クライスト大将、ヴァルテンベルク大将。フレーゲル男爵の言った事は事実ですか?」
俺の問い掛けに二人が身体をブルっと震わせた。二人とも俺とは視線を合わせようとしない。顔面は蒼白だ。誰かが唾を飲み込む音が聞こえた。それくらい艦橋は静まり返っている。

「もしそれが事実なら卿らは総司令部よりも彼らの方を上位に置いたという事になります。抗命罪どころではありませんよ、軍の命令系統から離脱した、軍組織から外れたのですから」
「……」
初めてフレーゲル男爵が不安そうな表情を見せた。阿呆、もう遅い。

「何らかの見返りとの引き換えに彼らの指示に従った、そういう事ですか? 或いは彼らに司令部を乗っ取られた、已むを得ず彼らに従わざるを得なかった、そうなのですか? どちらです?」
「……」
答えようが無いか。だがな、沈黙はこの場合一番最悪だぞ。俺にとっては願ったり叶ったりだが。

「そこの貴族諸卿を全員拘束しなさい」
俺の言葉に皆が驚いた。馬鹿八人衆も参謀達も陸戦隊もオペレータ達もだ。
「軍の命令系統に介入し今回の戦いを混乱させた疑いが有ります。場合によってはそれが原因で敗北する危険性も有った、利敵行為です。見過ごしには出来ません、拘束しなさい」

俺の言葉に顔を見合わせた陸戦隊員がおずおずと動き出した。すこし喝を入れるか。
「早くしなさい!」
「待て、ヴァレンシュタイン。我らを逮捕だと!」
「拘束ですよ、ヒルデスハイム伯」
「似た様なものではないか、無礼だろう!」
馬鹿八人衆の身体に陸戦隊員が手をかけた。クライストとヴァルテンベルクは既に手錠をかけられている。貴族達が“触るな”、“無礼者”とか騒いだ。

「こんな事をしてただで済むと思うのか、ヴァレンシュタイン! 伯父上に言い付けてやる!」
出たよ出たよ、“伯父上に言い付けてやる”が。でもこの場合は逆効果だな。
「それはどういう意味です、フレーゲル男爵」
「馬鹿め、その程度の事も分からんのか。伯父上がお前に思い知らせてくれるという事だ!」

勝ち誇ったように叫ぶ姿が滑稽だった。分かってないのはお前だ、お前にとってブラウンシュバイク公はトランプのジョーカーのような物だろう。無敵のカードだ、どんな劣悪な状況でもひっくり返してくれる最強のカード。でもゲームによっては最悪のカードになる。今のお前は愚かにも最悪のカードを自ら使ったのだ
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