第四十二話 暁と救世主
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正直な話、アスランはアークエンジェルをテロリストとして扱われている様子を見た時、自分の中で感情の波が爆発していたことに困惑していた。
(議長は、アークエンジェルを利用してオーブを討つというのか?)
だが、そう思う一方で、同時に納得している自分もいるのだ。どちらが正しいのかも、どうすればいいのかも、一体何が間違っているのかも、判らない。考えれば考えるほどその思考の渦に嵌っていく。
戦争を終わらせるためにロゴスを討つ。その為にオーブを討つ。自分の欲しかった未来は本当にそんなものなのか?そう思うが、アスランはふとミネルバに乗艦したばかりの頃を思い出す。
『お前はオーブを討てるのか?―――そりゃこっちだって向かってこなけりゃ撃たんだろうが、状況が変われば最悪、本土まで攻めることになるんだぞ?それでもテメエは討てるのかよ?』
マーレに忠告されたこの言葉。今思うに、彼はこうなる可能性を考慮していたのだろうか。
「全く、お前の言葉にはいつも核心を突かれてるような気がするよ」
今はラー・カイラムに居るマーレに感謝と皮肉を込めたような発言をするアスラン。その目には覚悟があった。迷うわけにはいかない。けれど、見過ごすわけにもいかない。
(俺自身の目で、議長の思い描く未来を見る――――)
その先にある世界が本当に自分たちにとって幸福な世界なのか?事実を確かめるべきなんだ。そう思いながら彼はセイバーに乗り込んだ。
◇
今になって―――レジェンドを受け取った時からだろうか?過去を振り返ることが多くなりだしてきた。
『良い曲だね―――もっと聞かせてくれないか?』
ピアノを弾いているとラウがそう言って来てくれた―――嬉しかった。そう思っていつだって彼に最高の曲を聞かせてあげようと努力した。
―――いつからだろう、自分に残された時間が少ないことが理解させられたのは……。
『ねえ、ラウは?』
『ラウは―――もういないんだ』
ラウが死んだことを知った。自分も彼と同じ運命が背負わされていることを知った。そのことを悲しく思う必要はなかった。だって、ギルの言葉はいつだって正しかったから……。
『だがレイ、君もラウだ―――それが、君の運命なんだよ―――』
俺にとって、ギルとラウの言葉だけが真実だった。世界は今、ギルの手で生まれ変わろうとしている。理念だけでは革命は成し得ない。必要なのは実現する《力》だ。
『連合か、プラントか、今また二色になろうとしている世界に、私達はただ邪魔な色なのかもしれません。ですが、だからこそ今ここで消える訳にはいかないのです。守るべきものの為に―――』
そう言って、アークエンジェルはギルの判断を間違いだと疑念を投げかけ潰えた。変化は不安を生む。
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