第一部
第一章 純粋すぎるのもまた罪。
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よサスケェ!」
中身は確か、五年後の兄に当てた手紙。そして五年後の自分に当てた手紙。それと、兄から五年後の自分への、てがみ。
兄に当てた手紙には日ごろの感謝の言葉だとか、これからもよろしくお願いしますだとか、そう書いていた。自分に当てた手紙には、自分を鼓舞する言葉を書いていた。そして、まだ兄さんとは仲良くやってますか、とも書いた。兄からのは見たことがないから、わからないけど、でも。
――見る気もしないから。
三通の手紙を重ねて、それをビリビリに破いた。マナがぽかんとした顔をする。
イタチへの憎しみも自分への腹立ちも、全てを失った悲しみも、何もかも引っかいて破いてしまいたかった。でもそれは形ないものだ。だから形あるこの手紙を、サスケは破いた。あの時の、兄を敬愛する気持ちごと。
「――うあああッ」
例え優しい兄の姿がイタチの演じた偽の姿であったとしても、それはサスケにとっては真実だったのだ。それが嘘でも、サスケが彼へ抱いた敬愛は本物だった。だからこそ余計に苦しかった。胸が張り裂かれるような気がした。こんな想いをしたのは、かなり久しぶりだった。
風が吹いて、紙くずを連れ去っていく。サスケの想いごと。
マナはそれを黙って見つめていたが……やがて腹をぐうと鳴らして、シリアスな雰囲気を台無しにした。
「よっ、ヒナタ。受かったんかい、おめでとー」
「あっ……マナちゃん」
額当てを片手に手をふる小柄な少女がそこにいた。思わず彼女が鉛筆を噛み砕いたときのことを思い出して逃げ腰になるヒナタだが、マナは気にした風もなく近づいてくる。
「マ、マナちゃんも受かったんだね! おめでとう……」
「いや、そもそも受験してねーし」
「……へ?」
努めて明るい声を出してみたものの、それは気だるげなマナの声によって遮られる。受験していないという言葉に驚いたものの、直ぐに彼女が狐者異一族であることを思い出した。
普通の術の使用が不可能ということは当然、今回の卒業試験の課題である分身の術の使用も出来ない。
だからといって受験せずに卒業できるというのは流石に反則だと思うのだが、しかし彼女は狐者異一族だ。父のヒアシが言うには、狐者異一族は全員が“大器晩成型”であるそうなのだ。ただ父の言い方には何か含みがあるようだったが。
「いやーそれでも流石に良心痛むしさあ、食遁披露してやった」
「しょくっ……!?」
通りでミズキの座っていた椅子には足が一本かけていたわけだ。木屑も地面に散らばっていたし、ゴミ箱には木の棒が一本入っていた。恐らくあれが食遁の残骸だろう。
「……あのねマナちゃん」
「おーどうしたヒナタ」
「ナルトくん、また受からなかったんだって」
「そらごしゅーしょーさま」
眉を
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