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てくれますよ」
マスター・ライラス。この町には最強と謳われる魔法使いがいる。彼なら、あんな魔物など、赤子の手を捻るより簡単に始末できる。
「それに、まだ何もやってませんよ」
「・・・・・・」
ミストの正論に、主人は黙るほかなかった。
夕方になると、酒場は一気に客が訪れる。仕事を終えた男たちが、癒しの場を求めて。
「ミストちゃーん!!こっち酒三つー!」
「はーい!!」
ミストはトラペッタの酒場の看板娘である。端正な顔つきに、華奢な身体というのが、男からの人気の理由だとか。
だが、彼女は、バニーガールの服を着ない。バニーガールといえば、酒場の定番だが、昔に酒場のマスターがミストにバニーの服を着るように言ったら、顔面を殴られてしばらく鼻血が止まらなかったという。それ以来、マスターがバニーの服を着るように言うことはなかった。そのため、彼女は普通の町娘が着るようなワンピースにエプロンという、質素な格好をしている。
だが、その格好の方が少女らしい華やかさが際立ってまた良いという意見が多数寄せられている。
「ほら!ルイネロさん、起きてくださいよ!」
ミスト客が飲み終わったビールグラスを片手に、空いた方の手でカウンターに座っている男を揺さぶる。
ルイネロは、かつては高名な占い師だったというが、今は全く占いは当たらない。数年前から酒場に入り浸って愚痴をこぼしている。
「・・・・・・がごぉぉぉぉ・・・・・・」
「マスター、ルイネロさん完全に寝てます。どうしますか?」
酒のつまみを作っていたマスターは、顔も上げずに答えた。
「そのままでいいよ。それより、じゃんじゃんお客様のご注文の品、運んじゃって」
「はーい」
酒場の扉が開く。
新たに来た客に、従業員たちは「いらっしゃいませー」と常套句を口にする。
頭を軽く下げつつ入ってきたのは、昼間にあの魔物と一緒にいた少年と男だった。
「こんばんは。ここにマスター・ライラスというご老人はいらしますか?」
赤いバンダナの少年が、ミストに話しかける。
「あ、いえ・・・・・・まだいらしておりません。いつもなら来ているのですがーー」
「大変だっ!!」
突然乱暴に酒場のドアが開かれた。
酒場にいる者たちの視線が、ドアを開けた青年に集中する。
「マスター・ライラスが変な奴に襲われてるんだ!!」
その言葉に一瞬酒場は水を打ったように静かになり、それから青年を押しのけて外に走り出した。
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