第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
四十 〜愛の狭間〜
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を受け入れたのは、その想いが真摯だったからだ。
誰一人として欠かせぬ仲間だが、見境なしに手を出すつもりもなく、また相手が望まぬ限り、男女の仲を強いるつもりもない。
疾風も、それはわかっている筈……そう、思っていた。
「私は、皆のように素直になったり、甘えたりも出来ませぬ。……今朝の、そ、その……」
見ていたか。
後ろめたき事は何一つないが、疾風なりに思い詰めてしまったようだ。
「疾風。思い違いを致すな」
「……え?」
「相手を求めるのに、決まりなどない。疾風の気持ちは、嘘偽りなどないのであろう?」
「無論です。……歳三殿にこの身を預けた事、後悔など、微塵もありませぬ。寧ろ、感謝の念ばかりです」
「ならば、その想い、自ら確かめてみるがいい。今宵は、共に過ごそうぞ」
「あ、ありがとうございます!」
しかし、疾風の事……理解していたつもりだったが。
ふ、私もまだまだだな。
昼過ぎ、星を伴い、市中を見回った。
「思いの外、混乱はないようだな」
「そうですな。主が、情報を早めに流したのが効いたようです」
「情報を如何に活用するか。その重要性に気づかぬ輩が、存外多い。正確な情報を間を置かずに入手出来れば、人は安心する。逆に隠蔽したり虚偽ばかりすれば、信用を失い不安を煽る。少なくとも、味方に対しては前者でありたいものだからな」
「はっ。それに、前途に絶望していた庶人が、希望を取り戻したという話も来ておりますぞ」
飢える者に対し、炊き出しを行うと共に、城壁や道路の修復事業を初め、働き口のない者に職を与える。
それを今朝から始めた結果、すぐさま効果が表れたらしい。
無論、これだけでは一時凌ぎに過ぎぬが、まずきっかけを与える事。
万が一、効果が期待ほど得られぬならば、次の手を打つ。
手をこまねいているよりは、まず行動。
……幕府の要職にあるご歴々を見ていて、痛感した事でもある。
「農地の様子も見ておかねばなるまいな。糧食の蓄えが無限にある訳ではなく、税の徴収を免除は出来ぬ以上、そこを再建しない限り、焼け石に水だ」
「酒も、畑が荒れていては飲めませぬからな。美味い酒に美味いメンマ……それも、食が不自由なければこそ、楽しめるものですからな」
「星の場合は、その二つだけあれば良いのではないのか?」
「……主。私を何だとお思いなので?」
事実を指摘しただけなのだが、星は不服そうだ。
「あの……」
不意に、声をかけられた。
歳の頃は、鈴々と同じぐらいであろうか。
亜麻色の髪を、短く切り揃えた少女が、私を見上げている。
「私に何か?」
「はい。……あの、太守さん、ですよね?」
「うむ。確かに私は土方だが?」
すると、少女は
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