第十六話 たまには無力感を感じてくれないかな
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ト星域 旗艦ブリュンヒルト エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
クライスト、ヴァルテンベルクの艦隊が同盟軍の攻撃を受け混乱している。そして同盟軍は後退を始めた。それを見てオペレーターが報告の声を上げた。
「反乱軍、急速後退をしています」
酷く冷めた声だな。クライスト、ヴァルテンベルクをどう見ているかが分かるような声だ。もっとも司令部の人間は皆白けた様な表情をしている。似た様な思いなのだろう。
「元帥閣下」
「う、何かな、総参謀長」
「これ以上の戦闘は無意味と思います。全軍に集結命令を出すべきかと思いますが」
俺の言葉にグリンメルスハウゼンがスクリーンを見た。スクリーンには遠ざかる同盟軍が映っている。
「そうじゃのう」
気が抜ける声だ。分かっているのかな、爺さん。これからの方が厄介だという事に……。分かってないだろうな。内心でウンザリしながらオペレーターに集結命令を出すように命じた。
「総参謀長」
「はっ」
「勝ったのか? それとも負けたのか?」
「……反乱軍は撤退しました。我が軍の勝利と見てよろしいかと思います」
何を言い出すのかと思ったら……、皆が呆れているだろう。まあ兵の損害は五分五分かな、いや少し向こうが多いか。だが向こうはあの潰走振りからするとホーランドは戦死しただろう。それに向こうが撤退したのだ、六分四分で勝った、そう見ても的外れじゃない。上出来だよ、最初は負けると思っていたのだからな。それからすれば大勝利と言っても良いくらいだ、口には出せないが……。
「元帥閣下、クライスト、ヴァルテンベルク両提督は戦闘中再三再四にわたり総司令部の命令を無視しました」
「ああ、そうじゃのう」
ブリュンヒルトの艦橋の空気が変わった。皆が俺とグリンメルスハウゼンを見ている。
「これは抗命罪に該当します。軍法会議はオーディンにて行うとしても彼らに艦隊をこのまま指揮させることは出来ません。司令官職を解任し拘束する必要が有ります」
俺の言葉にグリンメルスハウゼンは眼を瞬いた。
「あー、総参謀長」
「分かっております。元帥閣下は余り厳しい処分を御望みではない、そうですね」
「ああ、そうじゃ」
また眼を瞬いでいる。溜息が出そうだ。
「残念ですがこれは軍の統制の根幹にかかわる問題です。閣下の御意に従うことは出来ません」
「……」
「これからの事は小官が致しましょう。お任せいただけますか?」
「あー、良いのかのう」
本当に良いのかと眼で訊いている。良いんだ、爺さんが居ると反って混乱しかねない。
「はい、閣下は自室にて少しお休みください。全て終わりましたら御報告いたします」
「うむ、では頼む」
爺さんがよたよたしながら自室に向かった。一仕事終わった気分だ。司令部要員が皆軽蔑した
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