第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十九 〜大掃除・弐〜
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「俺は、憧れがあったんだ。鎧を着て、剣を持つって奴に」
全員が話し終えるのを待ち、私は言葉を返す。
「ふむ、動機はわかった。では今一つ、今の己に誇りを持っているか?」
「誇り、だと……?」
「そうだ。その剣、その槍は、確かに人殺しの道具だ。だが、闇雲に他者の命を奪うのはただの獣、人ではない」
「…………」
「だが、私は剣を振るうのは、誇りのため。誇りとは、他者から決して後ろ指を指されぬ生き様……私は、そう思っている」
彩が、一歩前に出た。
「私も武人、殿と同じだ。武を誇るというのは、ただ暴れる事ではない。他者から認められてこその、誇りだ」
「その誇りすらなくした……そんな獣だからこそ、我が主は容赦をしなかった。それだけの事だ」
疾風が続く。
「……なら、俺達も誇ればいい、そう言うのか?」
「ああ。庶人の暮らしを、その笑顔を守る事。それは、誇りではないか? ですよね、殿」
「うむ。彩の申す通り、己に誇りを持ち、立派に生きてみせる者には、私は敬意を払う。それだけだ」
兵らは、漸く大人しくなった。
「この事、よくよく考えよ。その上で結論を出しても遅くはあるまい?」
頷く兵ら。
「では、戻るか」
「は」
……と、周囲にいた客が皆、立ち上がった。
「太守様。今の言葉、嘘はありますまいな?」
一人が、そう言った。
「武人の誇りにかけて」
「……なるほど」
全員が頷き合い、そして跪いた。
「太守様! 我ら、あなた様についていきますぞ!」
「そうだ! 皆で、この魏郡を、ギョウを立て直しましょうぞ!」
そして、騒ぎを聞きつけた庶人が、店に押し寄せてくる始末。
夜通しで、思いも寄らぬ大宴会となってしまった。
皆が、晴れ晴れとした顔で過ごした一時……悪いものではなかった。
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