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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十九 〜大掃除・弐〜
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の一部を、税収不足を名目に減らし、差額を己のものとしていた」
「何だって!」
「馬鹿な! その為に俺達は協力していたってのに、騙されていたのか」
「まだ終わってはおらぬぞ、静まれ!」

 愛紗の一喝で、官吏達は押し黙る。

「そして、逢紀。城壁の補修や市井の費えとして立てられた予算を、名目を転じて己の一族の利に繋がる事業への投資としていた。また郭図同様、一部の商人と結託していた」
「…………」

 どうやら、全てを知っていた者は、この中にはほとんどおらぬと見える。
 隠しようのない動揺が、それを物語っていた。

「さて……。諸君、この三名の罪状は今、明らかにした通り。既に証拠も揃っており、言い逃れの許されぬところだ。だが、この者らばかりではない、お前達にも、この三人の跳梁跋扈を許してきたという、許し難い罪がある」
「た、た、助けてくれーっ!」

 たまりかねたのか、一人の官吏がその場から逃げ去ろうとする。

「取り押さえよ」
「はっ!」

 すかさず、控えていた兵により、捕縛された。

「私は、全員の罪を明らかにするつもりはない。そのような事をすれば、この魏郡がどうなるか、その程度は理解しているつもりだ」
「…………」
「今後、官吏としてあるべき姿に戻り、庶人の暮らしを守るために尽力するというのであれば、此度の事については全て、不問と致す」

 再び、場がざわつき始める。

「それに不服な者、従えぬという者は、この魏郡には不要。三日の猶予を与える、その間に立ち去るが良い」

 官吏達は、互いにひそひそと話をしたり、あらぬ方角に視線を向けたり。
 事態の急展開に、どうすべきか判断がつきかねている者が大半、か。

「なお、軍役にある者だが。本来、郡太守には軍権はないとの事。とは申せ、この冀州には現在、それを持つ者はおらぬ。よって、沙汰あるまで私が、一時的にそれを預かる。左様、心得よ。同じく、不服の者は三日のうちに立ち去れ」

 何のために呼ばれたのか理解していなかったのであろうが、武官共は漸く、得心がいったらしい。
 官吏と同じく、互いに何かを言い合っている。

「も、申し上げます!」

 そこに、兵が駆け込んできた。

「市中の庶人達が、一斉に城に押し寄せてきました」
「ほう。暴動か?」
「い、いえ。どうやら、触を目にしたようです」

 そして、叫び声が聞こえ始めた。
 郭図らへの弾劾を求める声……それは、居並ぶ官吏や兵の耳にも入ったようだ。

「では、私からの話は以上だ。己が何を成すべきか、今一度よく考えよ」

 それだけを言い残し、私はその場を後にする。

「さて、風。庶人とも話し合いが必要であろう、参るぞ」
「確かに、お兄さんが行かれた方がいいか
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