第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十九 〜大掃除・弐〜
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此処ではないようだな。
「板に文言を記し、それを一本の柱に打ち付けて立てる。構造は至って単純だ、費えもさほどかかるまい」
「……文言を書く方が、骨ですね。わかりました、太守様のお話が終わり次第、文官仲間に手伝って貰います」
「ったく、元皓が受けるんなら、おいらも手伝わない訳にはいかないな。わかったよ、やるよ」
さて、後は豪族共への備え、か。
ふう、一息つくにはまだまだ成すべき事が多いようだな。
一刻後。
集まった官吏の目の前に、三人を引き出した。
「あ、あれは郭図様?」
「審配様に逢紀様まで……」
皆の間に、動揺が走る。
「静まれ。……改めて名乗っておく。私がこの度、陛下よりこの魏郡太守を仰せつかった土方だ」
「…………」
「諸君の中には、郷挙里選でなく、いきなり名も素性も知らぬ私がこの座にいる事に対し、快く思わぬ者もいるだろうが」
言葉を切り、皆を見渡す。
戸惑いの色を浮かべる者、冷ややかに見据えてくる者、無表情の者……反応は様々だ。
「諸君らが、私の事をどう思おうが勝手だ。だが、一つだけ、改めて考えて欲しい事がある。官吏とは何か、という事だ」
再び、場が騒然となる。
今更何を、という者、これから私が何を言い出すのか、という者、半々と言ったところか。
「言うまでもないが、諸君が日々の糧を得られているのは、庶人が納める税があるからだ。では、何故庶人は税を納めるのか……そこの者、答えよ」
一番前にいた、中年の官吏に問いかけた。
「無論、それが義務だからでしょう」
「確かに義務だが。では、重ねて問う。その庶人が義務だけを押しつけられて、自分に得るものがない……そうなったら、どう考えるか?」
「それは……」
言い淀むその官吏の隣にいる、若い官吏に眼を向けた。
「では、お前はどう思う?」
「はい。働く意欲を失うでしょう」
「それで、その後はどうなる?」
「そうですね、逃亡するか……或いは、賊に身を落とす者もいるかと」
「そうだ。今の魏郡は、まさにその状態。そして、それを主導していたのが、この三名だ」
居並ぶ官吏の一部が、明らかに狼狽している。
「愛紗、三名の罪状を読み上げよ」
「はっ」
愛紗は、皆の前に立ち、良く通る声で文書を読み上げ始めた。
「まず、郭図。一部商人と結託し、郡で使用する物品の購入に便宜を図る見返りに、多額の賄賂を受け取っていた。また、郡内の子女を拐かし、己の慰み者として監禁していた」
「拐かしだって……そ、そんな……」
「静まれ。では、次に審配。会計監査の役にありながら、徴収した税の額を誤魔化し、それを自らの財として不正に貯め込んでいた。また、お前達官吏に本来支給すべき給金
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