第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十九 〜大掃除・弐〜
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「おい、キリキリ歩け!」
縛られた審配と逢紀が、謁見の間に連行されてきた。
郭図は、もう立ち上がる気力もないのか、床でぐったりとしている。
未だ出血が止まらぬのか、股間は朱に染まったままだ。
無論まだ殺す訳には参らぬ故、手当は施してはいるが。
「さて、何故こうなったかは……当然理解していような?」
「土方殿! 貴殿は何をしているか、わかっておられるのか!」
唯一、審配だけは気力が残っているらしい。
「ほう? 風、あれを」
「はいはーい」
風は、会計帳簿を取り出した。
「審配さんにお伺いしますけど。例えばですね、今年の魏県の税収額が明らかにおかしいのですよ。ここ数年の平均から見ても、少な過ぎるみたいでして」
「し、知らん!」
「おやおや、この帳簿の監査と承認は、審配さんが責任者と聞いていますがねー」
「…………」
「責任を負う、つまり知らなかったでは済まされませんよねー?」
「黙れ、小娘! 身分を弁えろ!」
「おおぅ、そんな事を言っていいのですかねー?」
と、風は口に手を当てて笑う。
「ど、どういう意味だ?」
「いえいえ。審配さんはもう、官吏ではありませんから」
「ななな、何を巫山戯た事を!」
黙って聞いていたが、そろそろ口を挟んでも良かろう。
「巫山戯てはおらぬ。貴様の屋敷から押収した裏帳簿、本来は公に納められる筈の税収を、懐にしていた証拠。職責剥奪には十分な理由であろう」
「郡太守に、そのような権限などない!」
「往生際が悪いぞ。おい、連れて参れ」
「はっ!」
後ろ手に縛られた文官数名に、城下の商人らが兵に連行されてきた。
「貴様らに、改めて問う。各地より集めた税を誤魔化し、着服するよう指示した者が誰か、今一度申せ」
「は、はい。そこにいる、審配様です」
「何を馬鹿な!」
「もう諦めましょうや。証拠が揃っていて、今となっては言い逃れようもありませんぜ」
ガクリ、と審配は膝を折った。
「さて、逢紀よ。貴様も、何か言い逃れするつもりか?」
「……は、はは……。も、もうおしまいだ……あははは……」
「どうやら、追求するまでもないみたいですねー」
「そのようだな。全員、牢へ放り込んでおけ」
「ははっ!」
まずは、古狸共は片付いたな。
「稟。城内の官吏に残らず、庭に集まるように通達せよ。一刻後、遅れは許さんとな」
「残らず、ですか」
「そうだ」
「わかりました」
「元皓(田豊)、嵐(沮授)。経緯を記した高札を、市中の主立った辻に立てよ。数は揃えられるだけで良い、急げよ」
「太守様。高札とは一体?」
「それに、急げって言われても。手間がかかるモンじゃないのか?」
そうか……高札の習慣は、
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