第7話 「逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ。逃げちゃダメだ」
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
前は優しいな。
しかしこの男に、そんなものは不要だ。
ゆさゆさと揺さぶる。
ほんとは殴ってやりたい。
ハッと身を硬くして、皇太子が起き上がった。
周囲をきょろきょろ見回して、
「アンネローゼは」
と聞いてくる。
第一声がそれかっ!!
腹が立ったので、無言のまま、視線だけで奥の部屋を示す。
「そうか」
皇太子はそれだけ言うと、奥の部屋へと向かった。
どことなく顔が引き攣っていたように思うが、いったいどうしたというのだ。
まったく。忙しいのは分かるが、夜、ちゃんと寝ないから、居眠りするんだ。困った奴なんだから。
ふんっだ。
■ノイエ・サンスーシ 宰相府 ジークフリード・キルヒアイス■
奥の部屋へと向かう皇太子殿下を、ラインハルト様が心配そうに見送った。
宰相府へと出入りするようになってからというもの、ラインハルト様は、しんぱいするような表情をお見せになる。今も怒っているように見えて、実は心配しているのだ。
帝国宰相になられてからの皇太子殿下は、私の目から見ても忙しそうだ。
膨大な問題が皇太子殿下の両肩に、圧し掛かっている。
どこから手をつけて良いのかすら、分からない。
アンネローゼ様をむりやり奪った男。
そう思っていた。
しかしその男は苦しんでいる。帝国の重圧に、問題に、だ。
一つの問題に手をつければ、それ以上の問題に直面する。
「俺は宇宙を手に入れたいと思った。だが、宇宙を手に入れるという事は、あの男が直面している問題に、俺も直面するという事なのだな」
ラインハルト様はそう呟かれていた。
サイオキシン麻薬。
現在、皇太子殿下が直面している問題だ。当初は、とある貴族がらみの問題だった。収入よりも明らかに派手な生活をしていた。
内情は借金で苦しんでいると思われていたが、どうもおかしい。
高利貸しと呼ばれる商人達が、噂しあっていたそうだ。
それをオーベルシュタイン大佐が聞きつけ、調べさせた。
この方は宰相府の事務局長をされていて、皇太子殿下に信頼されている。有能な人物だと思うが、少し近寄りがたい雰囲気がある。見た目ほど嫌な人物ではないと、分かってはいるのだが、少し苦手だ。
調べた結果、でてきたのが、麻薬密売だった。
しかも軍も絡んでいる。
軍内部の検査さえ、ごまかす事ができれば、どこへでも行ける。
途中で調べられる事もない。
麻薬を運ぶのに都合が良かったのだろう。
それでも一隻だけの犯行なら良かったのだ。しかし一個艦隊が絡んでいるとなると、大問題だ。貴族が率いる艦隊。それが麻薬の密売をしていた。
ブラウンシュヴァイク公爵様の怒号は、今でも耳に残っている。
「あいつらみんな、火あ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ