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銀河英雄伝説〜悪夢編
第十五話 悪い予想は良く当たる
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ませんか?」
クレメンツが溜息を吐いた。中央よりも端の方が機動性が確保できるのは事実だ。そして自重についても出来るだけの事はした。後はクライスト、ヴァルテンベルク次第だ。あの二人が貴族達を抑えることが出来るかどうか……。過度に期待するのは危険だろうな。俺も溜息が出た。



宇宙暦796年 1月 4日    ティアマト星域  総旗艦リオ・グランデ   ヤン・ウェンリー



「ホーランド提督から連絡です。帝国軍の一部が戦わずして後退しつつある。我が軍の勝利は目前に有り」
オペレーターの報告にビュコック司令長官が眉を顰めた。司令長官の気持ちは分かる。楽観的に過ぎる、そう思っているのだろう。オペレーターが報告を続けた。

「閣下、第十艦隊のウランフ提督より通信が入っています」
「繋いでくれ」
スクリーンに浅黒いウランフ提督の顔が映った。
『閣下、ホーランドの跳ね上がりを制止してください。奴は旧い戦術を無視する事は知っていても新たな戦術を構築できるとは思えません』

ビュコック司令長官がチラッと戦術コンピューターのモニターを見た。そこには同盟軍の一部、第十一艦隊が他の味方を無視して前方に躍りだし帝国軍に攻撃を加えている状況が映し出されている。
「だがウランフ提督、今のところ彼は順調に勝ち続けている様だ。或いはこのまま勝ち続けてしまうかもしれん」

ウランフ提督が顔を顰めた。
『その今のところと言う奴が何時まで続くか……。限界は目前に迫っていますぞ。帝国軍にほんの少し遠くが見える指揮官がいれば後退して逆撃の機会を狙うでしょう。今ここで彼を制止しなければ我が軍はとんでもない損害を受けます』
「……」

今度はウランフ提督が皮肉そうな笑みを表情に浮かべた。
『ホーランドは自らをブルース・アッシュビー提督の再来と目しているそうです』
「三十五歳までに元帥になればアッシュビー提督を凌ぐわけだ。しかしな、ウランフ提督。帝国軍にも遠くが見える指揮官が居るらしい。一部の艦隊が戦わずして後退している様だ」

『グリンメルスハウゼン、いやエーリッヒ・ヴァレンシュタインですな』
「おそらくそうだろう」
二人が少しの間見詰め合った。
『……妙ですな』
ウランフ提督が考え込む姿を見せるとビュコック提督が片眉を上げた。

『帝国軍は本体ではなく右翼が後退している』
「なるほど、確かに妙だが……」
『とにかく、彼を後退させないと……』
「そうだな、後退するように命令を出そう」

通信を終えるとビュコック司令長官が第十一艦隊に後退命令を出した。しかし素直に後退するかどうか……。予想外の事が起きている、後継者戦争としか言い様のない事態だ。同盟軍は同盟市民の軍に対する信頼を繋ぎとめるために宿将と言えるビュコック提督を宇宙艦
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