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ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
劫火の巫女
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ていなかったわけではない。
ド派手なオレンジ色の鎧は、左腕全体をきっちり覆っていた。鎧の弱点になりやすくなる関節部分にも、肘当てを付けているくらいだ。
いくら
軽鎧
(
ライトアーマー
)
とは言え、火の粉ごときダメージのダの字すらも発生しない。しかし、単なるダメージならともかく、左腕を苦もなく貫通するというのは尋常ではない。
そこまで思い、ウィルは見た。
宙を舞う火の粉の色が、あらゆる色を跳ね返す白であることを。
「…………………ッッ!!」
そこまで思考したとき、ウィルは腹部に激しい衝撃を感じた。
カグラに蹴られた、と感じたのは随分後だった。
必死に翅を広げて制動を掛ける。ようやくスピードが緩まったところで、ウィルは再度のチャージを敢行しようと上手く焦点が合わなくなってきている視線を上げた。利き腕である右腕を潰されたことは痛いが、まだ左がある。
だが、視線の先で血塗れの巫女は白く燃え盛る大太刀とは反対の手、左手をゆっくりと上に上げる。その人差し指は、真っ直ぐ二人の上空を指している。
つられるように目線を巡らすと、そこには────
「………………な……」
幾千もの火の粉が、不規則な軌道を描きつつも豪雨ごとき様相で落下してきているところだった。
一瞬頭によぎる、絶望の色。
しかし、ウィルは直前でそれを頭から叩き出した。相手は刀などの明確な武器ではない。ただの火の粉なのだ。
あれだけ不規則な軌道を描くのならば、つまりそれは見た目通りの質量を持っているということなのだ。すなわちそれは、息でも吹けば簡単に吹き飛ばせるということ。
すぐさま集中しようとしたウィルは唐突に────
見た。
視界の端で、カグラの口角が優美に持ち上がり、勝ち誇ったような笑みを浮かべるのを。
「ま………さか……………」
呆然と行ったウィルの視線の先で、カグラは持ち上がった口角の隙間から密やかな声を発した。
それは凛と張っていて、力のある声だった。
「《
真火
(
しんか
)
・
百花繚炎火乱
(
ひゃっかりょうえんからん
)
》」
瞬間。
ウィルの上空に舞っている火の粉の一つ一つが、ぐぐっとその純白の姿を歪めた。それはまるで、寸前まで空気を入れた風船を無理やりに小さくさせようとするような。
そして────
────────────────────ッッッッッッッ!!!!!!!!
この世の音を丸ごと詰め込んだような爆発音が響き渡り、上空にあった火の粉が全てそんじょそこらの火炎魔法が爆竹に思えるほどの爆発を起こした。
さきほどの炎の津波とは桁違いのスピードで迫り来る、灼熱の劫火にウィルはもはや何の感慨も起きなかった。
ただ、一言。ああ、と思っ
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