暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
劫火の巫女
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面ではかなり手痛い弱点だ。

カグラの今までの戦い方を見てみると、彼女の戦法は基本的に一撃必殺を信条としている。手数で相手のHPを削っていくウィルとは、正反対と言ってもいいだろう。

それを撃破、または突破するには、相手以上のパワーで押し切るか、相手の隙を突けばいい。

しかし残念ながら、後者はほとんど不可能と言ってもよい。

まず、乱戦ならばともかく、ここは障害物も何もない空の上で一対一だ。今地上でリョロウとセイが相手をしているレンのシステム外スキル《地走(じばし)り》でもなければ、とてもじゃないがカグラの背後に回り込むなんて芸当できるわけがない。

ならばどうするか。

───勝てるかどうかわかんないッスけど、接近戦に持ち込むしかない……か。

そんな思考の下、ウィルは一層翅に力を込めて風を切る。そもそも、この空の上での戦闘ですら、いつまで持つか分からない。

アルヴヘイムに存在している全てのプレイヤーについている空へのチケットは、残念ながら有限なのだ。やがて翅は力を失い、ウィルやカグラはどこかの神話に出てくる蛮勇のように、翅をもがれて地に落ちる。

これが最後の一合。

鋭い呼気に全てを乗せ、ウィルは静かに目を閉じる。洗練され、訓練された精神は、すぐさま心の深奥へと潜水(ダイヴ)していく。

口が動き、言葉を自動的に紡ぐ。

全光五行集(すべてのひかりはごぎょうにつどい)五行威光我従(ごぎょうのいこうはわれにしたがわん)

ゴウッッ!と風が吹き荒れ、ふわりと五色にカラーリングされたクナイがウィルの懐から飛び出す。

それらは欠片さえも触っていないのに浮かび上がり、円形の隊列を組んでウィルの周囲を漂う。それらは最初疾走するウィルについて浮遊していただけだったが、次第に中央に向かって回りながら集い始めた。

それぞれが眩いばかりの光を発する。

そしてそれがちょうどウィルの左肩のあたりで溶け合い、融合して────

「シッッ!!」

鋭い呼気とともに、そこに手を突っ込んだウィルの右手に握られていたのは、目も開けていられないほどに発光する光のエネルギーでできた剣だった。

片手用直剣。

それくらいしかわからないほどに、眩い輝きを放っているそれを《夕闇の化神》は一気に抜き払い、呆気に取られていたカグラに猛烈なチャージを敢行した。

ごおおぉぉおおぉぉぉおおおおおぉぉぉーんんんんんんっっっっっ!!!!!!!!

寺の鐘を何倍にも増幅したような音が、激しく耳朶を打つ。激しすぎる衝突の余波だけで、空間が悲鳴を上げている。

互いの鼻が引っ付くような至近距離で、ウィルは静かに、穏やかに言った。

「《大怒(モラルタ)》」

それを聞き、カグラは驚愕に息を呑んだ。
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