暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
ALO
〜妖精郷と魔法の歌劇〜
劫火の巫女
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する。

だが、頭の中は至って冷静だった。

素早く眼前に迫っている炎の壁をチェックする。早くしないと、この壁に飲まれる前に、その周囲の気温だけでダメージを負いそうだ。

一見してほぼ何もできなそうな、天災とも言えるカグラのこの心意技だが、まだ打つ手はある。

大体この手の広範囲重攻撃技の目的は、行使者対多数の場合はもちろん殲滅。しかし、行使者対一の場合は、相手の回避ルートを潰すという目的にすり替わるのだ。

その場合、必然的に発生する弱点というものがある。

それは────

万物流転水神(ばんぶつをるてんするすいじんよ)万物動止氷神枷受取(ばんぶつのうごきをとめるひょうじんのかせをうけとれ)ッ!!」

身体の前で交差するように構えた二つの青いクナイがひときわ強い輝きを放った。

柄の部分からじょぼり、と溢れ出した水色のせせらぎ。そしてそれは、刀身に宿る青い過剰光に触れた側からパキ、パキという硬質な音とともに凍り付いていった。

たちまち、元の倍ほどにも巨大化していく刀身。

ぐんぐん巨大化し、短剣ほどだったクナイはみる間にタワーシールドかと見まがうほどの氷の巨剣へと成長した。

宵闇の輝きを鏡のように反射する、その巨大な二振りをクロスするように、スプリガンにあるまじきくすんだ金髪を空中に流しながら振り払う。

「おぉォがあああぁぁぁぁぁぁっっっっ!!!!」

雄叫びを上げながらゴウッ!と空気が切断される。

同時に、空間に霜が降りるほどに白く、冷たく凍る。圧倒的な冷気が雪崩のように薙ぎ払い、劫火の炎の津波に襲い掛かる。

そして────

ボッッ!!

風船の空気が抜けるような音とともに、炎の壁に直径二メートルほどにもなる穴が開いた。いや、開いたなどと言う低レベルな物ではない。

くり抜かれたのだ。直径二メートルの円となって、白く輝く劫火の津波が。

そこに、ウィルは躊躇なく飛び込む。

そう。これが広範囲技の弱点である。相手の回避ルートを塞ぐことに重点を置いているため、一点への攻撃に弱いのだ。だからこうして、簡単に貫ける。

白き輝きを潜り抜けた先は、もはや安全地帯と言っても差し支えなかった。向こう側で感じた、身体中を絞り尽くされるがごとき熱さは、もう感じない。

カグラの端正な顔が、初めて歪む。そこに現れるのは、驚愕。

───つっても、中、遠距離でバチバチやりあっても、向こうに利があるのは明らかッスね。

ウィルは、背中を震わせながらコンマ一秒下で思考する。

ウィルの心意《付与効果(エンチャント)》は、応用形態や適応力ならば右に出る者はいない。がしかし、その分いまひとつパワーに秀でないというウィークポイントが存在する。

それは、この局
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