チームの弱点
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うんじゃないだろうな、その箒は何だ?」
三人の男達も、足を止めた。
ランデルの隣をワイドボーンが苛立ったように通り、テイスティアの前に立つ。
箒を盾にするように握りしめた、テイスティアがワイドボーンを見上げた。
その箒に、ワイドボーンが気づいた。
「お前のクラスは一カ月間ずっと掃除とか面白い仕組みでもあるのか?」
「ち、違います。これは」
「これはなんだ、テイスティア。どうなんだ――貴様らにも聞いているのだぞ?」
それまで他人事の様子であった三人の男達に問いかけられ、彼らは面白いほどに狼狽した。
「え。いや」
男達が、正直に答えられるはずもない。
戸惑ったような声に、ワイドボーンは苛立ったように髪をかいた。
「貴様のクラスはどもりが流行ってるのか。どうなんだ、答えろ――後輩」
テイスティアと三人の男達からはまともな答えが返ってこないと思ったのだろう。ワイドボーンは自分が押しのけた入口の女性に声をかけた。
「ち、違います」
慌てたような言葉に、ワイドボーンは満足したように頷いた。
「違うらしいぞ、テイスティア。ならば、貴様はなぜ二日連続で掃除などをしている。計算まで出来ないのか?」
「それは」
答えられず、視線がランデルを向いた。
ランデルはその視線に、ちっと小さく舌打ちをする。
「テイスティアが優しくて、自主的に代わってくれたんです。ワイドボーン先輩」
「ふざけるな、後輩。貴様らに名前を呼ぶ許可を出した覚えはない。第一、こいつは掃除など代わっている余裕はない」
「わかりました、すみません」
言葉ではそう言いながらも、不満な様子を隠すこともなく、ランデルはテイスティアの箒を奪い取った。
覚えてろと、小さく呟く。
「テイスティア、お前の担当はいつだ」
「それは来週の水曜日です」
「そうか。聞いたか、後輩――テイスティアが代わった昨日の掃除は、水曜日と交換だ。水曜日もお前がやれ」
「な!」
「な? おい、屑ども。間違えるな――私は交換だと言ったんだ。はい以外口にするなと、教官から習わなかったか?」
「ちょ、横暴だろが」
「横暴? 横暴というのは、抵抗できない人間に無理矢理自分の仕事を押しつけるお前らのことをいうのだ。屑」
ワイドボーンは断言し、そして周囲を見渡した。
「さらに言えば、それを見て見ぬふりをする貴様ら全員も同罪だ」
そう吐き捨てられれば、周囲も慌てたように視線をそらした。
「ふん。言い返す根性もないか――玉無しばかりだな」
「ふざけんな、てめっ!」
辛辣な言葉に、ランデルが手を伸ばした。
もはや上級生であることも忘れているようだ。
あと小さくテイスティアが反応すれば、ランデルの身体は宙を舞っていた。
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