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オベローン
第二幕その四
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第二幕その四

「愛がこの世で最も尊いのですから」
「アッラーを否定するというのか?」
「それは否定しません」
 パックはそれは否定した。
「ですが貴方のその御考えには賛成しないだけです」
「ではどうするというのだ」
「ヒュオンさん」
 パックは今度はヒュオンに顔を向けた。そのうえで彼に告げるのだった。
「ここは私にお任せ下さい」
「君に?」
「そうです、これで」
 応えるとすぐに腰の角笛を手に取った。そうしてすぐにそれを吹くのだった。
 するとそれで太守も兵士達も動かなくなった。まるで彫刻の様に固まってしまったのだった。
 ヒュオンもレツィアもそれを見て呆然となる。パックはその彼等に対して告げるのだった。
「よし、今です」
「今って!?」
「一体何が」
「決まっています、今のうちに逃げ出すんですよ」
 パックが彼等に勧めることはこのことだった。
「さあ、早く」
「そ、そうか駆け落ちか」
「このバグダットを出て」
「そうです、この太守の方も兵隊さん達も動けない今こそです」
 チャンスだというのである。
「さあ、早く」
「そうだね。じゃあ今こそ」
「ヒュオン様、行きましょう」
「レツィア!」
 ヒュオンはすぐにレツィアの元へ駆け寄った。そうしてその手を取りすぐに駆けるのだった。
 だがそれは彼等だけではなかった。シェラスミンとファティメはそれぞれ駆け寄ってそのうえで階段の終わったところで手を取り合うのだった。
「あっ、貴女もですか」
「貴方も」
 二人は笑顔で手を取り合って言い合うのだった。
「私の名前はシェラスミンといいます」
「私はファティメです」
 それぞれの名をここで名乗った。
「どうやら一目惚れしてしまったようです」
「私も。それでは御主人様達も行かれることですし」
「そうですね、私達も」
「はい」
 また笑顔で言い合う二人だった。
「行きましょう」
「いざ、愛の旅へ」
 こうしてこの二人もまた旅立つのだった。パックはその四人に対して言うのだった。
「それではですね」
「それでは?」
「一体何をするのです?」
「まずは一目散にバグダットを離れ」
 彼が言うのはこのことだった。
「それから船でフランクに入りましょう」
「僕の祖国に」
「ヒュオン様のその国に」
 ヒュオンとレツィアはそれぞれ言う。
「戻ろう、そしてそこで」
「私達は」
「何度も言いますが愛こそが最も尊いのです」
 またこの言葉を出すパックだった。自身の左手の人差し指を前後に軽く振っていささか教訓がましい様子で述べるのだった。
「仕える神よりもです」
「それじゃあ僕達は」
「ええ」
 二人で顔を見詰め合う。その目はこれまでになく熱い。
「戻ろう、フランクに」

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