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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十八 〜大掃除・壱〜
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りの者は、参るぞ。続け」
「応っ!」

 抵抗する家人を押し退け、屋敷内をくまなく探す。

「いませんねー」
「うむ。だが、屋敷は取り囲み、何人たりとも出してはならぬと命じてある。……何処かにいる筈だ」

 ふと、私は庭に眼を向けた。

「あの建物は?」
「はっ、蔵のようです。家人の話では、滅多に人の出入りはないとの事ですが」

 兵士の答えに、風と顔を見合わせ、頷いた。

「あそこだな」
「ですねー」

 そのまま庭に出て、蔵の前に立つ。
 だが、頑丈そうな鍵がかけられ、扉はびくともせぬ。
 家人に糺したが、鍵はないとの一点張りである。

「歳三様! 審配は捕らえました!」

 そこに、稟と疾風が駆けつけてきた。

「それで歳三殿。郭図はどうなりました?」
「恐らく、この中なのだが。この通り、鍵がかけられている。家人も鍵はない、と言い張っているようでな」
「そうですか。ならば、私にお任せを」

 疾風はそう言い、大斧を構える。
 そして、

「やっ!」

 バキン、という音と共に、見事に錠前が壊された。

「よし、入るぞ」
「はっ!」

 重い扉を押し開けた。

「ひ、ひいっ!」
「……何と言う、醜さ」
「……鬼畜めが」
「……問答無用で、地獄に落ちやがれなのですよ」

 皆が呆れ、そして冷ややかに郭図を見る。
 その周囲には、鎖で繋がれた、全裸の少女が数名、ぐったりとしていた。

「……さて、郭図。何か、言い逃れはあるか?」
「ひ、土方……」

 もう、虚勢を張る気力すら失せたようだな。

「風の調べた通りでしたねー。郡の見麗しい女の子を拐かしては、このように慰み者にしていた、と。死ねばいいのですよ」
「私も、全面的に賛成です」
「……歳三殿。是非、その役目、私に」

 三人の怒りは、凄まじいものがある。
 ……無論、私もはらわたが煮えくり返っているが。
 私は兼定を抜き、郭図へと躙り寄った。

「よ、寄るな……寄るなっ!」
「……貴様には死を以て贖うしかない。が、その前に、私からの鉄槌を下す」

 兼定を一閃。

「ぎゃぁぁぁぁぁっ!」

 郭図は、股間を押さえて転げ回る。
 その手の隙間からは、鮮血が噴き出してきた。

「宮刑ですかー」
「確かに、相応しい処罰ですね」
「……ああ。ですが歳三殿、我ら以上に容赦がありませぬな」
「当然だ。こ奴は、それだけの事をしたのだからな」



 逢紀は女装して逃亡を謀ったが、彩が見破り捕縛。
 異変を察した豪族が押し寄せたが、全て鈴々が追い払った。
 こうして、魏郡の大掃除は、山場を超えた。
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