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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十八 〜大掃除・壱〜
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物だが、発揮すべき処を誤ったな。

「その方らに、見せたい物がある」

 合図と共に、謁見の間に引かれた幕が開く。
 そこには、大量の竹簡が積まれていた。

「これが、何だと?」
「中を改めよ」
「…………」

 渋々ながら、各々がそれを手に取り、広げる。
 その一人の手許から何かがはらり、と落ちた。
 それは、黄色く色づいた一枚の葉。

「これは……?」
「黄色の葉を挟んだ竹簡。……それは本来、県令が処理すべき案件が記されている。確かめてみよ」
「…………」
「他も改めてみるがいい。赤い葉は県長、茶色の葉は尉の案件だ」
「で、これが何と言われるのですかな?」

 ふむ、まだ余裕綽々か。
 ……それとも、気付かぬ程愚かなだけか。

「では、お前達に尋ねる。これらを仕訳し、しかるべき先に割り振るのが役目の筈。だが、昨日の時点でこれは全て、郡太守分として置かれていた。何故だ?」
「そ、それは……」
「職務怠慢も許し難いが、職務放棄は重大な違法行為。それを知らぬ貴様らではあるまい?」

 みるみるうちに、全員の顔が青ざめて行く。
 今更、己の立場を理解し始めたか。

「も、もしや……あの山を全て、精査なされた……と?」
「そうだ」
「で、出鱈目だ! 俄太守などに、こんなに早く、誤りなく書簡の仕訳が出来る筈などない!」

 一人が、そう叫んだ。

「往生際の悪い奴が、まだいるようだな。けど、それはおいらが調べたんだぜ?」

 嵐が、そう言いながら連中の前に姿を現す。

「な、何だ。お前のような小娘に用などない」
「はん。語るに落ちる、とはてめえらの事だな。おいらは沮授、前冀州刺史の文官頭やってたモンさ」
「な……」
「少なくとも、この魏郡だけ他の郡とやり方が違うなんて話は聞いた事がないがな。それでもまだ、ゴチャゴチャぬかすのか? ああ?」

 啖呵を切られた文官共は池の鯉の如く、ただ口を開いたり閉じたりするばかり。

「嵐。この場合、適切な処分は何か?」
「そうさな。職務放棄は私財没収の上に一族郎党死罪、ってとこかな?」
「し、死罪だって?」
「無茶苦茶だ! 職権乱用だ!」

 喚き騒ぐ文官共に、私は歩み寄る。

「黙れ。貴様ら、官吏とは何か。それを忘れ、本来の職責を果たさぬ者など、死すら生温い!」

 兼定を抜き、じりじりと迫る。

「お、お、お許し下され!」
「い、命ばかりは! 何卒!」

 見苦しく、この期に及んで命乞いとは。
 恐怖からか、失禁する者すらいる始末だ。

「主。お待ち下され」

 その時。
 星が、私の前に立ちはだかった。

「星、何の真似か。そこを退けよ」
「いいえ、なりませぬ。如何に主とは申せ、これば
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