第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十八 〜大掃除・壱〜
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図らとの繋がりがある者共、という意味か」
彩は、頷く。
「不正は前の太守ぐるみとなれば、武官や兵が全員無関係……とは考えにくいかと」
「確かにな。だが……」
「そこまでは手が廻らぬ、ですな?」
「そうだ。本来なら、一網打尽が望ましいのだが」
悪事を働く輩は、己の保身に対する嗅覚が人一倍、鋭いのが常。
あの古狸共もまた、例外ではあるまい。
「殿。この魏郡に到着した日の事、覚えておいでか?」
「忘れる訳がなかろう。百官総出で、歓迎の祝宴と称して懐柔に出てきたのだからな」
「うむ。だが殿は、それを手厳しく突っぱねられた」
「その結果が、古狸共と筆頭とする、数々の嫌がらせ、という訳だ」
「……殿にはまだ申し上げておりませなんだが、旧来の武官や兵の一部にも、意図的に職務怠慢をする者共が混じっている様子でして」
私利私欲に塗れた武官や兵など、害悪でしかない。
むしろ、得物を手にしている分、更に悪質とも言える。
極論すれば、山賊共と何ら変わらぬのだ。
「それも含め、私や皆に散々嫌がらせを繰り返した。そうする事で実務を滞らせ、私が頭を下げる、とでも思ったのであろう」
「でしょうな。竹簡の一件はその最たるもの。ですが、殿は見事にそれを跳ね返してしまわれた」
「皆の尽力があっての事だが、奴らはぐうの音も出せぬ有様であったな」
「先ほど、古狸めらとすれ違ったが、目を合わせようともしませぬ。あれだけ殿や我らを侮っていただけに、その反動が出ているのかと」
黄巾党絡みでの風聞は、どの程度耳にしていたかはわからぬが、あの様子では私を単に運が良いか、賊相手に戦功を立てた輩……その程度に見ていた節がある。
だが、それは私のみならず皆に対しても、甘過ぎる認識だったとしか言えまい。
やはり、この世界でも、後世に汚名を残した者はそのまま、という事か。
「……わかった。では、それも含めた手立てを、早急に考えねばなるまい。稟と風、それに元皓(田豊)と嵐(沮授)を呼んでくれ」
「応っ」
部屋を飛び出していく彩の背を見ながら、ふと思う。
……一見、武一辺倒に見える彩だが、やはり張コウという人物なのだと。
私がおらねば、やはり華琳に仕える事になっていたのであろうか……。
謁見の間に赴いた私の元に、文官が集められた。
昨日溜まり場にいた者全てが対象である。
非番の者もいたが、有無を言わさずの出頭を命じ否は言わせなかった。
「何事でございますか。如何に太守と言えども、些か強引ではありませんか」
「全くで。我らは、理不尽には屈しませんぞ?」
全員が口々に不満を申し立て、露骨に不機嫌な顔をする。
中には、気丈にも睨み据える者すらいる。
その気骨はなかなかの
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