第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十八 〜大掃除・壱〜
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「はっ! ふっ!」
四半刻ほど、無心に剣を遣う。
上半身は諸肌だが、寒さを感じる事はない。
徹夜明けでぼやけた頭が、次第にすっきりしてくるのが実感出来た。
そこに、誰かが近づいてくる気配がした。
「あれ? お兄ちゃん、鍛練か?」
「鈴々か」
「何か、すっごく強そうな氣を感じたのだ。そうか、お兄ちゃんなら納得なのだ」
妙に、嬉しそうだな。
「だが、個人の武では、鈴々や彩らには勝てぬ。無論、雑兵や賊らに後れを取る訳にはいかぬが」
「そうか? 愛紗も疾風も、お兄ちゃん、本当に強いって言っているのだ」
「ふっ、あの二人か。それは、大仰に申しているだけであろう。それよりも鈴々、頼みがある」
「お兄ちゃんの頼みなら、平気なのだ。何をすればいいのだ?」
「うむ。今日に限り、私が申し伝えるまで如何なる者であろうが城内外の出入りを差し止めよ。そのように、兵らにも伝え、徹底させて欲しいのだ」
「にゃ? 相手が誰でもか?」
「そうだ。仮に、陛下であろうとな。無論、此処にお運び遊ばず事はあり得ぬがな」
「合点なのだ!」
駆けていく鈴々の後ろ姿を見送り、私は再び兼定を手にする。
今少し、雑念を払っておかねば。
更に四半刻ほど、型を遣い、兼定を収めた。
「はぁぁぁ……」
ゆっくりと息を吐く。
全身に、心地よい汗をかいたな。
「彩(張コウ)。何用か?」
私が声をかけると、物陰から姿を見せた。
「殿。気付いておられましたか」
「途中からだがな」
「さ、然様ですか」
慌てて、目を逸らす彩。
「如何致した?」
「あ、い、いやっ! そ、そのっ」
顔を赤くしつつも、横目で垣間見ているようだが。
「そ、その……。殿の裸体は、初めて……」
なるほど、そういう事か。
「では、私の部屋で待つが良い。汗を流してから参る」
「は、はっ!」
足早に立ち去る彩。
……やはり、如何に優れた武官とは申せ、女子には変わりない。
今少し、気遣わねばならぬか。
井戸水を何度も被り、着替えた後で、私室へ向かう。
「待たせたな」
「い、いえ」
まだ、多少顔が赤いな。
「済まぬ。見苦しきものを見せてしまったな」
「そそ、それはわ、私の方こそ、ととと、とんだ無礼を」
吃りまくる彩もまた、新鮮だな。
……が、これでは話が進まぬ。
「彩。用件を申せ」
「……はっ」
漸く、いつもの剛毅な彩に戻ったようだ。
「殿。大掃除の前に、一つだけ気掛かりがありまして」
「うむ、忌憚なく申すが良い」
「では。不正を働いた文官の処分は当然なれど、兵や武官は如何なさるおつもりか?」
「郭
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