第十四話 変な髪形をした奴は嫌いだ
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嫌になる。顔を顰めるとシュトックハウゼンが問い掛けてきた。
「総参謀長、顔色が宜しくないが……」
「昨日、熱を出して寝込みました」
俺が答えるとシュトックハウゼンとゼークトが顔を見合わせた。
「それは……、大丈夫なのですかな」
「大丈夫です、ゼークト提督。それにここで十分に休ませていただきますので」
「それなら宜しいのだが……」
「大丈夫です」
俺が敢えて大丈夫だと言うと二人とも何も言わなかった。……大丈夫じゃねえよ。あの馬鹿共が旗艦に乗っているという事はだ、クライスト、ヴァルテンベルクの二個艦隊はまるで役に立たないという事が確定したという事だ。あの二人が自分達の力で勝とうとしてくれるならまだましだ。俺は後ろに引っ込んでいて連中に全てを委ねるという方法も有る。だがあの馬鹿共が一緒に乗っている以上それは無い。
連中は軍事の事など何も分からない、そのくせ自分達で艦隊を動かそうとするだろう。そしてクライスト、ヴァルテンベルクはそれを拒否できない。“誰の御蔭で艦隊司令官になれたと思っている、遠征に参加できたのは誰の力の御蔭だ”連中はそう言いだすだろう。クライストもヴァルテンベルクも最終的には遠征に出た事を後悔するだろうな、原作のシュターデンを見れば分かる事だ。俺が熱出して寝込んだって全然おかしくないだろう!
話が終わって司令室を出たが与えられた部屋には向かわず医療室に向かった。イゼルローン要塞には医療室が幾つかあるが行くところは決まっている。ヴァレリーには付いて来なくて良いと言ったんだが無理やり付いて来た。昨日寝込んだのが相当気になるらしい。
医務室の前に来たが中には入らなかった。壁に背中を預け周囲をゆっくりと見る。そんな俺をヴァレリーが気遣ってくれた。
「中に入らないのですか?」
「……三年前、ここは地獄でした。手足の無い負傷者、手当ての最中に死んでいく重傷者。辺り一面の血の臭いで何度も吐きました」
ヴァレリーが驚いたように周囲を見回した。ごく普通の通路、そして医務室への入り口だ。だが俺の目には今でも焼き付いている光景が有る。ストレッチャーで運ばれてくる血だらけの重傷者。そして軽傷者がそこらじゅうで蹲りながら呻いていた。あの壁もこの壁も入口もそして廊下も血に染まって真っ赤だった。俺が背を預けた壁も汚れていた。まるで小さな子供が赤のペンキで悪戯でもしたかのようだった……。
あの戦闘詳報を書いたのはあれを見たからかもしれない。戦争に真摯に向き合わない奴らの所為で俺は地獄を見せられた。あの地獄を見せられた怒りがあの戦闘詳報を書かせたのだと思う、もう見たくないと思った気持ちが書かせた……。多分あれは俺の悲鳴なのだろう、もうあれを見たくないという……。あれ以来戦争を出世の一手段と見做す奴らにどうにも違和感を感じる俺が
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