第十四話 変な髪形をした奴は嫌いだ
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ビュコック中将は大将に昇進し宇宙艦隊司令長官に就任した。
「厄介な相手だな、エーリッヒ・ヴァレンシュタインか」
「ええ、ようやく姿を現しました」
ようやく姿を現した……、その通りだ。これまでグリンメルスハウゼン元帥の陰に隠れていて姿の見えなかった切れ者の参謀。
「宇宙艦隊総参謀長か……、まだ若いのだろう?」
「二十歳をちょっと超えたばかりの筈です。異例の事ですね」
「異例か、それだけ出来るという事だ」
「宇宙艦隊司令部でも彼には注目しています。なかなか派手な経歴のようです」
ヤンが一口紅茶を飲んだ。口調とは裏腹な寛いだ姿だ。溜息が出た。
「気を付けろよ、油断しているとロボス大将のようにやられるぞ」
俺が注意するとヤンは苦笑を浮かべた。ヤンは作戦参謀として総旗艦リオ・グランデに乗り込むことが決まっている。
「分かっています。幸いビュコック司令長官は前任者の様に出世欲に囚われているわけじゃありません。無茶をすることは無いでしょう。勝敗は分かりませんが前回のような悲惨な事にはならないと思います」
「そうだといいんだがな、とにかく気を付けろ」
念を押すとヤンは黙って頷いた。
帝国暦 486年 12月 15日 イゼルローン要塞 エーリッヒ・ヴァレンシュタイン
十一月初旬にオーディンを出た遠征軍は今日、十二月十五日にイゼルローン要塞に到着した。俺達が到着すると要塞司令官シュトックハウゼン大将と駐留艦隊司令官ゼークト大将が殊勝な表情でメインポートまで迎えに出て来ていた。まあ当然だな、グリンメルスハウゼンは宇宙艦隊副司令長官なんだから。もっとも胸の内は如何だろう? あまり面白くは無いかもしれない。
「御無事の到着、お慶び申し上げます」
「お疲れでありましょう、ゆっくりと御休息ください」
前者がゼークト提督、後者がシュトックハウゼン要塞司令官だ。どう見ても遠方から来た爺さんを迎える言葉だな。宇宙艦隊副司令長官への言葉とは思えない。俺の考え過ぎかな?
「おお、済まぬの。少しの間厄介になる」
こっちは明らかに遠方から来た爺さんの声だ。二人に案内されて司令室に行く。俺達の後にクライスト、ヴァルテンベルクの一行も続いた。直ぐに“平民が我らの前を歩くのか”と不満そうな声が聞こえた。なるほど、ゼークトとシュトックハウゼンのあの言葉は老人にではなくあの連中に向けての言葉か、それなら納得がいく。
この遠征には八人の貴族が同行している。フレーゲル男爵、ラートブルフ男爵、カルナップ男爵、コルヴィッツ子爵、ヒルデスハイム伯、シャイド男爵、コルプト子爵、シュタインフルト子爵。フレーゲル、シャイドはブラウンシュバイク公の甥だ。
その他の連中も公の縁戚かその与党だ。連中がクライスト、ヴァルテンベルクの
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