『ピース』
[25/27]
[1]次 [9]前 最後 最初
サンドバッグが魅力的に見えている。激しく体を動かす想像をした。雨を払うようなエネルギー。ネットの動画で「サンドバッグ打ち」を検索する。「ボクサーたいした事ないじゃないか」
僕は机の上の原稿用紙に目を留めた。
よく知らないけれど
近くにいた男が童貞を
捨てたらしい
そこには少しも悲しみがなくて
こころよく涙が滲む
傘は閉じ続ける
傘は閉じ続ける
「父さん!」
深い森の奥深くに足を踏み入れ、誰も知らない果実を摘んで、獣を恐れながら仲間の元に帰り、それを振舞いたかった。私の昔からの夢だ。スイッチを換えれば広がる世界は触れたことはなくともこの手触り。行ける。行ける。堕ちたと思った空ですが、実は身長が伸びていた。夢のある世界が私を否定するたび、私の頭は雲を突き抜ける。
好きと言われた後
自分のふがいない所に目を向けるから
もう少し背が伸びたらと言い訳して
君より高いところに行きたいと
失礼な事想いました
それはガラスの浮き玉の心
圧のある現実に
溺れまいとする
気高く 臆病な
青い春のものです
森の奥で怖い人に会ったら、三千円で許してもらおう。例えて言うなら、深い因果の法則。奪うもの必ず奪われる。いくらでも持って行くがいい。誰かが私にもぐりこんでこの言葉を盗み取るなら、血の結末は避けられまい。
世界が雨で燃える
みんなの体温でゆげを立てている
タバコの煙に混ざって
ゆげは筒の中に消える
煙を吐き出す男が言う
『燃え尽きるまですべてが勘違いさ』
ゆげに混じる煙は
年老いたあきらめ
すえたにおい
鎮痛剤として世界にただよう
若い美しさは失うことを恐れていては輝くことはない。けなせ。年老いた臭い。その分、世界は深みを増し、いずれこの手に堕ちるだろう。
イキがって
殴り狂うは
サンドバッグ
手応えはあれど
それはただの砂袋
若気の至りの
世渡りのようです
輪郭を保ち、凛とした姿は未来あるからこそ。結末が訪れると知るやぼやけて、世界とのつながりを絶つ。心の奥を見せるなら無罪の輝きを放ってみせる。
アレは固い殻の中にあるから
思い切り行った方がいい
アレは長い年月ねむっているから
どう変わっちまったかな
アレは最近だれかが触れちまったから
古い手は通用しないぜ
アレはこれから見たこともない形になって
俺たちを明日に運ぶらしい
アレはたまにオッパイにかわるぜ
私は果実を探している。森の奥に分け入って、舌を喜ばす果実を。その味わい、いずれ世界に本当の国境の線を引くだろう。サンドバッグ。サンドバッグ。
[1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ