崑崙の章
第18話 「むにゃむにゃ……もう食べられないのだ……」
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麦自体がこの辺りではあんまり作られてなかったのもありますが。あ、そろそろこっちの肉餅が焼きあがりますよ」
「いただくのだ!」
できたて熱々の肉餅は、ほかほかしていて見た目にも美味しそうなのだ。
「はぐはぐ……はちち……んぐ。うん、パリっとしていてなかなかなのだ。でも、このちょっとピリッとくる辛さはなんなのだ?」
「ああ。それはたぶん胡椒とかいうやつでしょう。最近、巴郡から流れ始めたものでして。なんでも、軍師様が大至急取り寄せたものだとか」
「朱里たちがかー……ということは、たぶんお兄ちゃんがらみかなー?」
「お兄ちゃん? ああ、話しに聞く北郷様ですね? なんでも大陸を旅されているとか」
「そうなのだ。もう『四ヶ月』にもなるのだ……今は何処でなにしてるか、心配なのだ」
そう。
お兄ちゃんは、年が明けても帰ってこなかったのだ。
予定では、新年までには戻ってくるという話だったのに……
「そうですか……でも、その北郷様宛に、あちこちから書状がきていると聞きましたが」
「そうなのだ。朱里と雛里が、桃香お姉ちゃんと対応をきょーぎしているのだ。なんでも東の劉表と、西の劉焉って言っていたのだ」
「そ、それ、荊州の州牧様と、益州の州牧様じゃないですか!? りゅ、劉備様宛でなく、北郷様宛ですか……?」
「らしいのだ……おっちゃん、お水ちょうだい」
「あ、はい」
肉餅は美味しいけど、喉につかえるのだ。
「ごくごく……ぷはー! それで今度使者が来るそうなのだ。ただ、お兄ちゃんがまだ帰ってこないから、とりあえず宴会で饗すことにしたのだ」
「はあ……それで、この新作料理、ですか」
「そういうことなのだ。朱里が言うには『統治し始めて日が浅いのに、こういう料理を振る舞えば、向こうはきっと侮れず、と思うはずです』と言っていたのだ。どういうことだ?」
「さあ……ただの料理人の私では、わかりかねますね」
「鈴々もわかんないのだ。でも、朱里が言うことなら間違いないのだ……それより、次の『どらかれ』ってまだ出来ないのかー?」
「あ、すいません……なにしろ作り方はわかっても作るの初めてで。ちなみに、これは『どらいかれい』というらしいですよ?」
どらいかれい?
よくわかんないけど、味見できるのは嬉しいのだ。
「拉麺の下汁を出汁にするらしいのですが……試行錯誤してみました。もうすぐ出来上がるかと」
「なんだかすごくいい匂いだから、ずっと待っていたのだ! すごくお腹が鳴る匂いなのだ!」
ぐぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ……
ほら、こんなにお腹が鳴っているのだ!
「あ、あれだけ食べたのに、まだ……すごいですね」
「鈴々のお腹は長江より広いのだ!」
「え、それ……自慢です
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