崑崙の章
第18話 「むにゃむにゃ……もう食べられないのだ……」
[11/11]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
死んでいく子供を見なくて済むようにもなるでしょう」
朱里ちゃんの言葉。
食べるものがなくて飢えて死ぬ子供……その下りに、嗚咽を漏らす文官の人もいた。
この国では、基本的に働ける人が食べる権利を持つ。
だから、働く力が小さい子供は、大人よりも餓死者が多い。
それでも子供に食べさせようと、無理した母親が餓死することもある。
そうした負の連鎖こそが、この国最大の病でもある――
義勇軍にいた頃、ご主人様は飢えた農民を見て、そう言っていたことがあった。
それが無くなれば……無くなれば。
私が夢見た『誰もが笑って暮らせる国』になる――
「それだけじゃありません。今後はこの農業改革だけでなく、工業改革、軍事改革、そして最終的には――政道改革すら行う予定です」
その言葉に、いっきにざわめく周囲。
政道改革……その意味は――
「朱里ちゃん……」
私は静かに朱里ちゃんを見る。
「どうしても、やらなきゃ……ダメなの? 朱里ちゃん……」
「……はい。この農業改革、工業改革、軍事改革。そして……政道改革。これは、絶対にやらなきゃいけないんです」
この先の未来のためにも……どうしても、絶対にやらなきゃダメなんです。
彼女の眼は……そう断言していた。
私は彼女の瞳の光を見て、覚悟する。
そう……そうだね。
たとえすべてを敵に回しても。
私は……ご主人様と共に、新たに誓ったんだ。
そう……『誰もが笑って暮らせる未来』の為に。
「……うん。そうだね」
私は立ち上がる。
「全ての官吏に問います。貴方たちが望むのは、自らの栄達ですか? それとも名誉ですか?」
私の言葉に、全ての官吏が私に注目する。
「私はこう答えます……望むもの、それは『笑顔』と。そして更に問います。誰の笑顔のために、そして何のためにそれを望むのですか?」
朱里ちゃん、雛里ちゃん、愛紗ちゃん、馬正さん……その仲間たちが私を見つめる。
「私は再度答えます。それは……すべての民の、誰もが笑って暮らせる未来を得るために、と!」
私の言葉に、官吏が一人、二人と立ち上がっていく。
「だから私は、皆さんにお願いします。苦しいことがあるでしょう、辛いこともあるでしょう……でも、どうか……どうか、あきらめないでください。そして、私に……この劉玄徳に、力を貸してください!」
頭を下げる。
その瞬間――
私の名を叫ぶ官吏の大合唱が、漢中に木霊した。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ