第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十七 〜獅子奮迅の嵐〜
[6/6]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
さに死屍累々、といった風情であった。
皆、着の身着のままで、思い思いの場所で眠っている。
……この状態で、よく各々の寝る場所があったものだ。
結局、竹簡の山は見事、片付いた。
大半は県令や県長など、本来は郡太守の処まで持ち込まれぬものばかり。
それ以外も、重要な案件はほんの僅か。
嵐曰く、代理すら立てられない非常時であれば、文官の協議で決を下しても構わぬものが殆どらしい。
……さて、顔でも洗って参るか。
「おや、お兄さん。おはようですよ」
井戸のところで、風と出くわした。
「うむ、おはよう」
「……酷いお顔ですねー。徹夜してしまいましたか?」
「……ああ。そう言う風こそ、一睡もしていないのではないか?」
「いえいえ、風は何処でも眠れますからご心配なく。でも、いきなり稟ちゃんと元皓ちゃんを連れて行かれたのには、ちょっと困りましたけどね」
「済まぬ。二人にも、手伝わせてしまったのだ」
「仕方がないのです。……お兄さん、ちょっと」
と、風は手招きをする。
私が屈むと、そっと耳打ちをしてきた。
「郭図さん達の事、動かぬ証拠を見つけたのですよ。風も頑張りましたから」
「……そうか。良くやったな、風」
その頭を、そっと撫でてやる。
「ちゃーんと、後でご褒美はいただくのですよ。それよりお兄さん、善は急げって事で」
「……うむ」
井戸水を汲み上げ、冷たい水で気を引き締めた。
その後で。
私の事を罵倒しようと手ぐすねを引いてきた古狸共に、処理を終えた竹簡を突きつけた。
「ま、まさか……あ、あれ全部を……?」
「そうだ。急ぎ、と申したのはその方らではないか」
「あ、あははは、さ、然様でしたな」
全員、顔が引き攣っていた。
……さて、古狸共に引導を渡す時が来たようだな。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ