第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十七 〜獅子奮迅の嵐〜
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いい」
「なるほど」
私は筆を持ち、嵐が示した場所に、花押を記した。
「これで、この竹簡は落款済み、という訳。後は文官に渡すだけなんだけど……そういや、文官は?」
「……うむ」
私は、先ほどまでの経緯を、簡潔に述べた。
「はぁ? するとあの阿呆共だけじゃなく、連んでいる文官共まで、旦那を見捨てて帰っちゃったって事かよ?」
「そうだ。だが、今の私が如何に指示をしたところで、連中は従わぬ」
「酷すぎるぜ、それ。だいたい、これだって仕分けすらしてないしさぁ」
嵐はいくつか、竹簡を開いていたが、
「……旦那。アンタ、完全に舐められているぜ?」
そう言って、手にした書簡を机に広げた。
「見ろよ。庶人からの訴状だけどさ、これ……県令の仕事だぜ?」
「県令? それならば、前任者がそのまま残っている筈だが」
「だから、舐められてるって言ったんだよ。……にしても、これは職務放棄だな」
と、嵐は眼を光らせた。
「旦那。今日の当番だった文官、名前はわかるか?」
「それならば、出勤の記録を照合すれば良い筈だ」
「よし。……でも、その前にこれ、仕分けが必要だな。ちょっと待ってろよ」
嵐は、弾かれたように飛び出して行く。
そして、稟に元皓、更には星と愛紗、疾風、そして一旦下がった筈の彩までも、連れて戻ってきた。
「嵐、一体何だと言うのだ……な、何だこれは?」
文句を言おうとしたのであろうが……。
尤も、誰しもこの量を見て、驚かぬ方が無理というもの。
「旦那が困ってるんだ。みんなで手分けしようぜ」
「嵐。だが、皆には各々、任務を与えてあるのだぞ?」
「わかってるよ、旦那。だから風さんと鈴々は外したんだって」
……無茶をしているようで、見るべきところに誤りはない、という事か。
「稟さんと元皓は問答無用。疾風さんも元官吏なんだし、愛紗さんは私塾を開いていたんだろ? 星さんも読み書きちゃんと出来るんだし、彩さんは昼行灯の仕事を手伝っていたし。ほら、みんな問題ないじゃないか」
「……強引ですね。ですが、確かにこれでは、歳三様が身動き取れないのはわかりました」
「それならそうと、ちゃんと説明してからにしてくれれば良かったのに。嵐はいつも強引過ぎるよ」
稟と元皓は、溜息をつく。
「はいはい、無駄口聞く暇があったら、さっさと始める。愛紗さんと星さんは、まず無関係の書簡を選り分けて。彩さんと疾風さんは、内政と軍事の選り分け。稟さんと元皓は、更にそれを精査。おいらは、旦那の横にいて手伝いに専念する。さっさとやっつけちまおうぜ?」
そして。
外から、チチチと鳴き声が聞こえた。
雀の囀りか……?
私は、凝り固まった肩を回しながら、席を立つ。
「すうすう……」
「ムニャムニャ……」
執務室は、ま
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