第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
三十七 〜獅子奮迅の嵐〜
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がな」
「ま、そんな次第ですが。お役目です、直ちに取りかかっていただけますかな」
散々に好き放題を言うと、三人は去って行った。
「あ奴ら! 殿を何だと思っておる!」
「お兄ちゃん、ぶっ飛ばしたら駄目か?」
怒り心頭の二人。
「待て。今此処で怒りに任せて動けば、ますますおかしな事になる。自制せよ」
「クッ……」
「う〜、もどかしいのだ」
気持ちはわかるが、私まで同調する訳には参らぬからな。
それにしても、よくもここまで積み上げたものと、感心する他ない。
……文官ならではの嫌がらせ、それが多分にあるな、これは。
とは申せ、放置する訳にもいくまい。
それこそ、職務怠慢と、あらぬ訴えをされかねぬ。
「誰か、これを執務室に運んでくれぬか?」
その場にいた文官に声をかけてみる事にする。
が、
「今日はもう、勤務時間を過ぎていますので。では、お先に失礼致します」
全員が、そう言いながら引き上げていく。
誰一人として、私と眼を合わせようともせぬ。
……ここまで、露骨に非協力的な態度に出るか。
「待て、貴様ら!」
後を追いかけようとする彩を、羽交い締めにする。
「と、殿! お放しなされ!」
「落ち着け。武官のお前達が文官に手を出したとなれば、お前達もただでは済まぬぞ」
「し、しかし……あの態度。許し難い」
「今は、堪えよ。一時の感情で、全てを台無しにするつもりか?」
「…………」
どうにか大人しくなった彩を解放する。
「とりあえず、このままでは片付かぬ。運ぶしかあるまい」
「殿?」
「お兄ちゃん? まさか、自分で運ぶつもりか?」
「文官はもうおらぬ。だが、いずれも急ぎと釘を刺されているのだぞ?」
「……何と、理不尽な……」
「……わかったのだ。それならば鈴々が、運ぶのだ」
そう言うと、竹簡を抱え始めた。
「お兄ちゃん一人に、任せっきりは良くないのだ。鈴々は頭は良くないけど、このぐらいなら出来るのだ」
それを聞いた彩も、竹簡に手を伸ばす。
「ははっ、鈴々の言う通りだ。殿の、せめてもの手助け、私もさせて貰おうではないか」
「二人とも、そのような事はせずともよい」
「へへ〜ん、もう始めちゃったのだ。今更、止められないのだ」
「然様。それよりも殿、急ぎませぬと執務室が埋まってしまいますぞ?」
二人は、かなりの量を抱えて歩み出してしまっていた。
「……相わかった」
だが、ただ二人に運ばせる訳にはいかぬ。
女子に力仕事を押しつけるなど、男として己が許せる事ではない。
そう思い、私も竹簡を手に取った。
「あ、張コウ将軍……。な、何をなさっておられます!」
あれは……預かっている、韓馥の兵か。
「何、文官の怠慢で殿が困っておられるのでな。私にやれる事をし
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