一章 Experimental Results
No.1 新しい家族。
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眩しすぎる明かりをさえぎって現れた楓は、何処までも優しさを振りまく微笑を浮かべ、医者のように、執拗に質問を重ねてくる。
それに対して、凪は機嫌を損ねないように、恐る恐る受け答えをする。
「おなかと手足がちょっと痛いです」
「ん? 少し食い込みすぎているかな」
遠慮がちにいった言葉は、凪が思うよりも容易く受け入れられた。
縛られていた、という事実に対して凪とて何も感じない訳がない。
けれど幼い凪にとって、そんな事よりも彼女の機嫌の方が気にかかるのだ。
「どうだ、もう苦しくないだろう? それよりも他に変わったところはないかな?」
相変わらず優しすぎるぐらい優しい声音のおかげか、凪は落ちついて対応することが出来た。
それでもいきなり自身の変わったところを言えと言われても、中々見つかる物ではない。
そもそも人間の変化は目に見えるほうが少ないのだ。
それでも凪は必死に探した。
新しい家族が、新しく姉になる人が求めている答えを必死に探した。
けれど凪は見つけることが出来なかった。
心底困った顔をしながら、凪は一度義姉に目を向け、居た堪れない気持ちから視線を地面へと落として呟いた。
「わかんないです」
そんな凪を楓は興味深そうに観察しながら呟く。
「自覚症状がないのか? 身体的な変化は出ているが、そういえば私もそんなに惹かれていないし、何処か間違ったのか……」
実は楓も新しい弟に不安を抱いていた。
抱いていた不安は弟に対してではなく、周りから変人呼ばわりされる自分がきちんと姉らしくできるか、という点である。
変人と呼ばれる楓にしては、如何にも普通な反応だったと言ってもいいだろう。
けれど、姉らしい行動を考えに考え抜いた末に、楓は自分らしく姉らしい行動をしようと決めた。
それが何よりいけなかった。
城宮楓らしい行動といえば、人体実験である。
実は城宮楓という女子高生は、中学生の頃に科学の実験で目覚めてからというもの、マッドサイエンティストと化していた残念美人なのだ。
もちろん法律など考慮し、相手の了承を得たりはするものの、時折暴走してしまう、正に変人であった。
今回は自分の技術の粋を凝らし、弟が喜ぶと思われる身体能力、頭脳の向上に加え、女性に好かれるフェロモンを発するようにしてみたのだ。
もちろんそんな事を知らない凪は、ブツブツ呟く姉がまた不機嫌になっているのかと、おっかなどっきりに上目遣いで眺め続けているだけなのだが、楓はそれにすら気づかない。
気づく余裕がないのだ。
「んー、これは元々私が好きだったという仮説と、私には効かないという仮説と、失敗したという三つの仮説が成り立つわけだが、やはり私一人ではわからん」
凪は
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