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銀河英雄伝説〜悪夢編
第十三話 馬鹿な科学者だったんです
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げたはずです。そうなれば最前線の司令官職の兼任案の却下は間違いでは無かったと主張する根拠になったんです。それをあの二人は潰してしまった、それどころか三長官の責任問題にまで発展させてしまったんです」
「なるほど」
あの二人が隠蔽しようとしたのも当然だ、そして三長官が激怒したのも当然だろう……。

「帝国軍三長官は本当ならあの二人を軍法会議にかけたかったでしょう。しかしそれをやれば自分達も危うくなる、だからあの戦闘詳報を握り潰した、そうする事で自らの保身を図ったんです。そしてあの二人をオーディンに戻し昇進させずに閑職に回した。しかしそれが精一杯だったのだと思います。それ以上やれば自分達に撥ね返ってくる危険性が有った」
「……だろうな」

「あの二人もそれは分かっている、だから大人しくしている。今の帝国軍三長官が居なくなるのを待っているんです。新しい三長官の下でなら再起は可能だと考えているのだと思います。言ってみればお互いに急所を握り合っているようなものですよ。潰すことも出来なければ放す事も出来ない、互いに握り合う事でしか安心できない……」
疲れる話だ、一口水を飲んだ。

「今、三長官達は怯えていると思います。あの二人とブラウンシュバイク公が接触した。あの秘密がブラウンシュバイク公に漏れればどうなるか……」
「クライスト、ヴァルテンベルクの両大将が漏らす事は無いだろう、漏らせば自分達も失脚する」
俺の言葉にフィッツシモンズ少佐も頷いた。

「ええ、でも怯えているはずです。そしてそれはクライスト、ヴァルテンベルクにも言えます」
「どういう事だ?」
「私はあの二人の急所を握っているんです。何時でも握り潰せる。でもあの二人はそれを防ぐ術を持ちません」
「……」

「まああの二人を潰すときは帝国軍三長官も潰す事になりますからそんな事はしません。でも怯えているはずです」
つまり三長官もヴァレンシュタインに対して怯えているという事になる。卿はそれを理解しているのか。

「今度の戦いがどういうものになるかは分かりません。ですがあの二人は必ず私に恩を着せようとするか私の急所を見つけ握りに来るはずです。勝つ事よりもそちらを重視するでしょう。酷い戦いになりそうですよ」
ヴァレンシュタインが憂欝そうな表情をしている。

「しかし、あの二人にとっても今度の戦いは正念場だろう。失敗は出来ない筈だ。となれば勝つために協力するのではないかな」
気休めでは無かった。だがヴァレンシュタインは苦笑を浮かべている。まるでお前は何も分かっていない、そう言いたげな苦笑だ。

「馬鹿な平民出身の若造の所為で三年間干されたんですよ。あれが無ければ上級大将に昇進しそれなりの役職に就いていたはずです。今頃は次期帝国軍三長官の候補者として名前が挙がっていたかも
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