第十三話 馬鹿な科学者だったんです
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「帰れなくなりますよ?」
「ええ、それも良いかと最近思えてきました。同盟に戻っても所詮はオペレーターで終わりですし……。今の仕事の方がやりがいが有ります」
少佐の言葉に総参謀長は感心しないと言った様に溜息を吐いた。
「話してみますか……、でも条件が有ります」
「と言いますと」
「私を閣下とか総参謀長と呼ぶのは止めて貰えませんか、クレメンツ教官」
「それは」
「もうウンザリですよ。二十歳そこそこの若造に総参謀長なんて何を考えているのか。老人達はこっちに荷物を丸投げして知らぬ振りです。いい加減にして欲しいですよ、私は尻拭いばかりさせられている」
吐き捨てる様な口調だった、かなり鬱憤が溜まっている。
「しかし軍は上意下達です。そうでなければ機能しません。その為には……」
「分かっています。今だけで良いんです」
「……今だけだぞ」
「ええ」
嬉しそうな表情と口調だった。少佐がそんなヴァレンシュタインを見て苦笑を浮かべている。困った奴だ、総参謀長の職に有るのに駄々っ子の様な事をする。
「少佐、お水を用意して貰えますか、結構長くなると思います。少佐とクレメンツ教官の分も」
「分かりました」
フィッツシモンズ少佐が三人分のグラスを用意した。ヴァレンシュタインが一口水を飲む。それを待ってから声をかけた。
「それで、何が有った」
「……第五次イゼルローン要塞攻防戦は要塞主砲、トール・ハンマーによる味方殺しで終了しました」
「……」
「反乱軍は撃退しましたが味方をも要塞主砲の巻き添えにした責任を問われクライスト、ヴァルテンベルク両大将は職を解かれ閑職に回された、そう思われていますがそれは真実ではありません」
「……」
「イゼルローン要塞は何としても守らなければならないんです。あれを守るためなら味方殺しなど許容範囲ですよ。昇進は無理でも閑職に回される事は無かった。いやほとぼりが冷めたころに昇進させていたでしょう」
「まさか……」
俺が呟くとヴァレンシュタインが冷笑を浮かべた。
「そうでなければ次に反乱軍が並行追撃作戦を実行した時、帝国軍は要塞主砲を撃つ事を躊躇いかねません。それがきっかけで要塞が落ちかねないんです。その方が味方殺しよりも被害が大きい、そうではありませんか?」
「確かにそうだが……」
「反乱軍が第六次イゼルローン要塞攻防戦でミサイル艇による攻撃を選んだのも並行追撃作戦は有効だが最終的には味方殺しを実行されればイゼルローン要塞を落せないと判断したからです」
となると更迭の理由は何だ?
「あの時、私はイゼルローン要塞に居ました」
「イゼルローンに? しかし卿はイゼルローン要塞勤務になった事は無いだろう。あの当時は兵站統括部に居た筈だが……」
俺の言葉にヴァレンシュタインが頷いた
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