第十二話 ちょっとやりすぎたよね
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」
普段穏やかなミュラー提督が声を荒げて総参謀長に忠告した。言葉使いも上位者に対する物では無くなっている。それにしても恨み? 何か有るのか……。
「分かっている、分かっているよ、ナイトハルト。その事は誰よりも私が分かっている」
「拒否する事は出来ないのか」
総参謀長が首を横に振った。
「無理だね、陛下の御言葉が有った、そしてグリンメルスハウゼン元帥はそれを受け入れている。もう取り消しは出来ない……」
「余計な事を……。役に立たないばか……」
「ミュラー中将! 言葉を慎みなさい」
「はっ、申し訳ありません」
総参謀長の叱責にミュラー提督が慌てて謝罪した。危ない所だ、もう少しで上官の批判をするところだった。総参謀長が溜息を吐いた。
「ナイトハルト、心配してくれるのは分かるが気を付けてくれ。私達には敵が多いんだ」
「済まない、つい興奮した」
ミュラー中将が項垂れている。それを見て総参謀長がまた溜息を吐いた。
「各艦隊司令官は訓練を行い艦隊を鍛え上げてください。いずれ戦う時が来ます」
総参謀長が所用が有ると言って会議室を退室しても残された人間達は誰も動こうとはしなかった。暫くの間沈黙が有ったがロイエンタール提督がそれを破った。
「ミュラー中将、先程卿はあの二人、クライスト、ヴァルテンベルク大将が総参謀長を恨んでいると言ったがあれはどういう意味かな? 嫉んでいるなら分かるのだが何か有るのか」
皆の視線がミュラー中将に向かう。誰もがあの言葉に不審を感じていたのだろう。
「……」
「ミュラー提督?」
沈黙するミュラー提督にミッターマイヤー提督が声をかけるとミュラー提督がビクッと身体を震わせ大きく息を吐いた。どういうことだ、怯えているのか、その様子に皆が顔を見合わせた。
「申し訳ありません、今は話せないのです」
「……」
「何時かは話せる時が来ると思いますが……」
苦しげな声だ。
「それは何時になるかな?」
「……五年先か、十年先か……」
皆が驚いている、五年先? 十年先?
「どういう事かな、ミュラー提督。クライスト、ヴァルテンベルク大将の事なのだろう」
レンネンカンプ提督が訝しげに問いかけた。
「確かにあの二人が関係しています。しかしそれだけでは済まないのです」
それだけでは済まない?
「一つ間違えば軍はとんでもない混乱に陥るでしょう。そうなれば帝国は、……内乱状態に突入しかねません」
振り絞るような言葉に会議室が凍りついた。
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